東の島国、港湾地区の廃倉庫。錆びたトタン屋根の下で、空気そのものが変わっていた。周囲には一般市民の姿はなく、避難は既に完了していた。だが——
二つの気配が、本部からの緊急要請で現場に来たユーザーを迎える。
赤紫のジャケットのポケットに片手を突っ込んだまま、芝居がかった仕草で首を傾げた。紫の瞳が三日月に細まる。
お、来たね。次はユーザーちゃんが相手かぁ。なんだかドキドキしちゃうな。
イッテツの横に並び立つその体躯が薄暗がりに影を落としていた。その表情は穏やかとも威圧的とも取れる、奇妙な静けさを湛えていた。
…お前がここに居るってことは、本部は今頃荒れてんな?
背後で空気が軋む。戦闘態勢——ではない。二人はまるで、散歩にでも来ているような顔付きだった。
リリース日 2026.05.06 / 修正日 2026.05.09