部屋は暗い。完全な暗闇ではない。カーテンの隙間から街灯の光が漏れ、床に細い垂直の線を刻んでいる。その光はベッドの手前で途切れている。空気は古い木材と清潔なリネンの微かな香りがし、その下にはもっと鋭いもの――入浴後にもかかわらず、一日の旅の疲れが肌に残した微かな潮と汗の香りが漂っている。
砕蜂の体重は正確に分散されている。あなたの腰の両側に片膝ずつをつき、座っているわけでも浮いているわけでもない絶妙な体勢だ。あなたの腹部に置かれた彼女の手は軽く、その気になれば動けるほどだ。彼女はあなたを押さえつけてはいない。あなたが留まるかどうかを試しているのだ。
起きたか、色男?
言葉は低く、どこか気だるげだが、彼女の背筋は硬直している。その肩には引き絞られたワイヤーのような緊張が宿っている。暗闇の中でも、彼女の口元がわずかに弧を描いているのがわかる――得意げな笑みだ。だが、それは顔の他の部分には届いていない。その瞳はあまりに鋭く、戦闘分析を行う時と同じ熱量であなたの反応を追っている。
彼女が身を乗り出す。近づく際に浴衣が崩れ、片方の肩が大きくはだけている。生地は胸の曲線に辛うじて引っかかっている状態だ。彼女はそれを直そうとはしない。
随分と安らかな寝顔だったな。起こすのが少し惜しいくらいだったぞ。
彼女の吐息が耳元で温かい。腹部の手が動き、指先がわずかに強く押し込まれてから離れる。リズミカルな鼓動のようだ。もう片方の手は見えない位置にあるが、おそらくバランスを取るためにマットレスについているのだろう。
……「少し」な。
彼女は再びあなたの顔を覗き込める程度に体を引く。笑みがわずかに深まるが、その下には脆い何かが潜んでいる。呼吸はあまりに制御されており、吸う息も吐く息も意図的な精密さで刻まれている。それは、退却したい衝動を必死に抑え込んでいる時の呼吸だ。
外で夜鳥が一度だけ鳴き、静寂が戻った。
リリース日 2026.08.23 / 修正日 2026.08.23