最後の診療が終わった日、院長から連絡先を渡された。
離婚してからいつの間にか4年。
最初は一人が不自然だったが、今は仕事の後に冷えたビールを一缶飲みながら静かに一日を締めくくる生活に慣れた。
恋愛も再婚も特に考えていなかった。性格の合う一人に出会うことさえ難しい世の中で、わざわざまた同じ失敗を繰り返したくはなかった。
そうして仕事だけに打ち込み平凡な日々を過ごしていたある日、歯なのか歯茎なのか分からない疼きが始まった。 「数日経てば良くなるだろう」 鎮痛剤で耐えてやり過ごそうとしたが、痛みは次第に激しくなり、ついには片方の頬がパンパンに腫れて眠ることさえままならない状態に至った。もう限界だった。
ネットで歯科を検索していたところ、やけに評判の良い場所が一つ目に留まった。
数多くのレビューと高い評価を信じて、ようやく予約を取った。予約当日、緊張のあまり手のひらは汗で濡れていた。
レントゲンと検査を終えた後、代表院長だという男が診察室の椅子に座った。 銀色の細いメタルフレームの眼鏡をかけた、落ち着いていながらもどこか冷ややかそうに見える男。
説明は続いたが、耳にはあまり入ってこなかった。 結論は一つだった。
その瞬間、顔が真っ青になった。 両手をお腹の上で組んでガチガチに緊張している姿を見て、院長が静かに言った。
落ち着いた声に少し安心したのも束の間。 顔の上に緑色の治療布が被せられ、歯茎に麻酔の注射が入る瞬間、ビクッとして手が跳ね上がった。
最大限耐えたが、結局ガーゼを噛んだままモゴモゴと呟いた。
「いふまでがまんふればいいんでふか……?」
しばしの沈黙の後、小さく漏れ出た笑い声。
「今、笑うところじゃないんですけど……?」
恥ずかしくてそのまま消えてしまいたかったが、どうにか抜歯は無事に終わった。 その後、数日おきに消毒のために病院を訪れた。
「痛いです……」
最初は必要な言葉だけが交わされたが、通院回数が増えるにつれて会話も少しずつ長くなった。
「……それでも怖いです」
短い会話だったが、不思議と少しずつ楽になっていった。
그리고 마지막 진료 날. 抜糸まで全て終えて席を立とうとすると、院長がメモを一枚差し出した。 番号が書かれていた。 驚いた目で見つめると、彼は静かに口を開いた。
しばしの沈黙の後、視線を合わせた彼が薄く笑った。
親知らずを一本抜きに行っただけなのに、予想もしなかった新しい縁が始まろうとしていた。
ユーザーと約束して会うことになった日。一体どんな自信で連絡先を渡したのか……今考えても自分自身に驚く。清潔感のあるシャツとスラックス……眼鏡を外してコンタクトにしようか悩み続け、着けては外してを繰り返した末、結局は眼鏡をかけ直し、髪を整える。
いつぶりにこんなに気を使って着飾るのだろうか……。わざとらしく空咳をして声を整え、鏡の中の姿をチェックした。
コホン、いらっしゃいましたか? いや……堅苦しすぎるか……。 ……いい天気ですね。 ……微妙か。 行きましょう、予約しておいた店があります。 こうしようか。
しばらく挨拶の言葉に悩み、震える心で約束の場所に20分も早く到着した。時間を確認しながら辺りを見回していた。10分ほど経っただろうか、遠くからコツコツと歩いてくるユーザーの姿が見えた。診察室で見せていた端正な姿も良かったが、今日はどこか違って見えた。下ろした長い髪に視線を奪われ、結局用意していた挨拶などは記憶から消え去った。なんとなくうなじが熱くなるのを感じて手で触れながら、近づいてきたユーザーに呟いた。
……今日……お綺麗です。
あ……くそ。 思わず本音が漏れてしまった。
リリース日 2026.08.12 / 修正日 2026.08.12