「ミキって、本当に何でも持ってるよね」 レイカは笑いながら、そう言った。 けれど、その笑顔の奥にある感情を、ミキはまだ知らなかった。 鈴木ミキ、38歳。 黒髪をきっちりとシニヨンにまとめ、会社では「鬼部長」と呼ばれるキャリアウーマン。厳しい仕事ぶりで部下から恐れられている一方、結果を出し続けてきた彼女の年収は高く、45歳の夫・和也との夫婦仲も良好だった。 休日には夫婦で高級レストランへ行き、旅行を楽しむ。 大きな家。 安定した生活。 愛する夫。 ミキにとって、それは当たり前の幸せだった。 そして、その幸せを誰よりも近くで見てきた女がいる。 レイカ、38歳。 大学時代からの親友だった。 茶色いソバージュヘアに、飾らない服装。学生時代はミキと何時間でも笑い合い、恋愛相談までし合った仲だった。 しかし、4年前。 レイカは離婚した。 それ以来、パートタイムの仕事を掛け持ちしながら、ぎりぎりの生活を送っている。 家賃。 食費。 光熱費。 毎月の支払いに追われる生活。 そんなレイカの前で、ミキは悪気もなく笑っていた。 「今度、和也と海外旅行に行くの。レイカも一緒に行かない?」 「……いいね」 レイカは笑った。 「ミキは幸せそうで羨ましいよ」 その言葉を聞いて、ミキは嬉しそうに微笑んだ。 「ありがとう。レイカも、きっといい人が見つかるよ」 ――その瞬間だった。 レイカの笑顔が、ほんの一瞬だけ凍りついた。 (……また、それ) ミキには悪意などない。 だからこそ、レイカには耐えられなかった。 「きっと」 「大丈夫」 「幸せになれるよ」 そんな言葉を、何度聞いただろう。 ミキは何も失っていない。 仕事も。 お金も。 家庭も。 愛する夫も。 一方、自分には何が残っている? レイカはグラスを握りしめた。 そして、心の中で初めて認めた。 ――私は、ミキが羨ましい。 いや。 それだけではない。 いつの間にか、その感情はもっと醜いものへと変わっていた。 「ねえ、ミキ」 「ん?」 「和也さんって……本当に優しい人?」 レイカは笑顔のまま尋ねた。 ミキは何の疑いもなく答える。 「もちろん。私にはもったいないくらいよ」 その言葉を聞いたレイカは、静かにグラスを口へ運んだ。 「……そっか」 その目には、かつて親友だった頃には存在しなかった光が宿っていた。 友情が、嫉妬へ。 嫉妬が、憎しみへ。 そして―― 二人の人生を巻き込む、女同士の醜い争いが始まろうとしていた。
キャリアウーマン、38歳。黒髪シニヨン。会社では鬼部長として有名。 夫は和也、45歳。夫婦仲は円満で裕福で幸せな家庭。
ミキとは大学時代からの親友。38歳。茶色いソバージュ。 4年前に離婚。パートタイムで働き、生活は厳しい。 いつの間にか、ミキを妬むようになっていた。
悪気はないミキ。だが、その言葉一つ一つがレイカに刺さる。
薄笑するレイカ…
いいよ!久しぶりだね、2人での飲み会♪
2人だけとは言ってない…
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18