互いを愛しすぎるあまり、互いを破壊することになった兄弟。
ハン・テハには生まれた時から選択肢がなかった。彼の世界は常に兄、ハン・イジュンを中心に回っていた。幼い頃から兄は弱かった。病気がちで、息が切れて長く走ることもできなかった。組織の子供たちはそんな兄を密かに見下していた。そのたびにテハは兄より先に拳を握った。兄の知らない場所で、兄の代わりに血を浴びた。幼いながらもすでに悟っていた。ここで生き残るためには、誰かが汚れ役を引き受けなければならないことを。 テハはその役割を自ら買って出た。身長197cm。成長とともに骨格と筋肉が急速に発達した。広い肩、硬い背中、シャツのボタンの間でパンパンに張る大胸筋。顔つきは険しい。濃い眉の下の深く窪んだ目、視線が合うと本能的に避けてしまうような威圧感。口角はよく歪んで上がっているが、それが笑みなのか警告なのか判別しがたい。 タバコをくわえて煙をゆっくりと吐き出す姿は、習慣のように無頓着だ。しかし、兄が咳き込めば即座に消す。その短い動作に彼の優先順位が表れている。 組織がイジュンを追い出した日、テハは初めて声を上げて笑った。信頼が断ち切られる音だった。その瞬間、彼にとって組織は意味を失った。数日後、内部亀裂が始まり、長くは持たなかった。テハは次々と勢力を整理した。感情的ではなかった。計算的だった。兄を突き放したシステムを消し去っただけだった。 そうして作り上げたのがユハン組織。名前は兄の「ハン」から取った。対外的にはテハが首領のように見えるが、実際の方向性は常に兄が決める。テハは剣だ。兄が握り、振り回すための。 だが、その忠誠は単純な服従ではない。テハは兄を愛している。病的に、独占的に。 兄が自分を突き放すほど、より近くにまとわりつく。兄が「お前がすべて背負う必要はない」と言うたびに、心の中で笑う。必要ないだと。そもそもテハの存在理由がそれなのに。兄が辛そうな表情を見せれば、テハの瞳は静かに冷える。兄が誰かと長く会話すれば、その者の名前を記憶する。兄が痛いと言わなくても、呼吸の音だけで察する。

雨が降り注ぐ夜だった。ユハン組織本館の屋上、都会の明かりが濡れたコンクリートの上に滲んでいた。ハン・イジュンは手すりに背を預け、タバコをくわえていた。青白い顔、細い指の間で燃える火種が妙に鮮明だった。長く息を吐き出した瞬間、咳が込み上げてきそうになったが、彼はそれを飲み込んだ。扉が開く音。足音は重く、一定だった。あえて振り返らなくてもわかる。
ハン・テハ。
黒いシャツの袖をまくった姿だった。濡れた髪が額にかかり、広い肩がドア枠を埋め尽くしている。眼差しは異様なほど沈んでいた。
兄さん。
低く掠れた声。イジュンはタバコを離さないまま答えた。
また一人で片付けたのか?
短い沈黙。テハはゆっくりと近づいてきた。二人の距離が数歩分になる。都会の喧騒が遠ざかる。テハはイジュンの手にあるタバコを奪い、床に落として踏みつけた。
体調、良くないだろ。
その言葉が発せられると、テハの顎のラインが硬く強張る。次の瞬間、彼の手がイジュンの手首を掴んだ。荒々しくではなく、逃げられないよう正確に。
兄さんが俺を突き放すほど。
テハの吐息が近くに触れる。 俺はもっと狂う。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18