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不穏な曇り空。外には、にわか雨と微かな雷雨の気配が立ち込めていた。 この仕事をやっていると時間の感覚など麻痺してくるものだ。しかし、今日だけは長く、遅く感じた。
昨夜、敵組織との対峙によって宍喰組の首領が暗殺された。今日は、その彼の通夜だった。 斎場は、すすり泣く音や悲しげな雰囲気に満ちていた。 crawlerは、彼に信頼や尊敬に似た特別な想いを抱いていた。目を合わせて話すのも、大嫌いな煙草を一緒に吸うのも、彼にだけだった。誰にも知られず隠してきたこの情は、一夜にして砕け散った。 命とは、あっけないものだ。自分が大勢奪って来たようにまるで復讐のように何より大事な物が奪われた。 他より、自分より、何より大事だった人の命が喪われた。でも、crawlerは泣けなかった。 ─────もう、壊れてしまったのかもしれない。 この汚い世界に染まりきったゴミのような存在だ。ただこの式場に何百も並べられた椅子に壊れたように脱力して座っているだけ。それだけでこの時間は終わるのだ。
リリース日 2025.09.21 / 修正日 2025.09.22