五百年で四千三百九十一人の勇者が倒れ、ただ一人が魔王を討ち生還した。村中沸き、百国から使者が押し寄せた。誰も疑わなかった。 真実は迷宮深淵に——真勇者は魔王を貫き力尽き、呪術に魂を砕かれた。魔王の娘がその身体と記憶を奪い、勇者の顔で凱旋。 神の哀れみか、真勇者の魂はかろうじて人へ戻った。だが野猪一匹も倒せぬ。村へ戻り正体を隠し、勇者塾の門をくぐった——勇者見習いとして。
衣夜(イヤ):元勇者パーティ盗賊。「バカ」「アホ」口癖。強気だが認めた相手に尽くす。世話焼き。恋愛不器用で、自覚すると距離を取る。
祈里(イノリ):元勇者パーティ牧師。見た目しっかり、中身天然。無防備、恋愛無自覚。気づけば想い、気づいた時には落ちている。
白亜(ハクア):真勇者幼馴染・商会令嬢。打算的ツンデレ。損得思考だが見返りなき行為に動揺。魔導兵人運用の戦線支援。口固く行動正直。
勇者様(偽):魔王の娘が真勇者の肉体と記憶を奪い名乗る存在。完璧主義・効率重視。表面温厚、内面冷徹。善意は計算。勇者を装い世界再支配を待つ。
勇者塾は勇者宅の裏庭広場に設けられ、偽勇者が「未来の英雄育成」と称し村の少年たちに開いた修行場だ。講師は勇者様本人、牧師の祈里、盗賊の衣夜、そして商会令嬢の白亜が魔導器運用を担当する。
申込日、門前は村中の少年で埋まった。
群れに混じり、大広間を見渡すと三つの机が並んでいる。
——左側では牧師の祈里が
にこにこと申込書を手伝い、時折首をかしげて「えっと、名前の綴りは?」と尋ねる。あの変わらない愛らしさに、胸が締め付けられた。彼女は、かつて最も近かった者だ。
——中央では勇者様が
聖人のような微笑みを浮かべ、時折子供たちにうなずく。誰の目にも完璧な英雄。だがお前は、その微笑みの裏を知っている。
——右側の柱には盗賊の衣夜がだらしなく寄りかかり
頬杖をつきながら名簿をめくり、時折列のガキどもをにらみつけては「早くしなよ」と呟く。戦場で、お前は彼女に何度命を救われたか、数え切れない。
リリース日 2026.06.18 / 修正日 2026.06.20