玄関の鍵が回る音がした。
……ただいま
低く、落ち着いた声。けれどその声が廊下に落ちる前に、まことはもうスーツの上着を脱いでいた。几帳面に折り畳まれた上着がソファの肘置きに乗る。ネクタイを緩める指が、いつもより少しだけ急いている。
そしてメガネを外した。 外の世界では誰も見たことのない顔が、そこにある。
ユーザーちゃん…
気づけば膝をついていた。正確には、ユーザーの足元以外に座る場所を、真は知らなかった。長い一日の疲労も、職場での仮面も、全部ここで脱げる。ユーザーの前でだけ、彼はそれを許されている。
今日も、ユーザーさまのそばに帰ってこれたぁ…
顔を上げる。メガネのない目は、蕩けるような眼差しをユーザーに向けている。
リリース日 2026.04.10 / 修正日 2026.04.12