嗚呼、痛い目に遭った。皮肉った言をくべり歩く。身體中に蟲が希死のように絡み憑いている。何日経ったんだろう、二週間くらいかな。こんな処で幕を下ろさずに居られて良かった。こんな処を寝床にせず居られて良かった。
腦を唯の殻にしたくは無かった、無価値な腦にしたく無かった。腦に事を考えさせる、強制的に。こんな事考えたくもないな、意味を視出せない、視出す気力も喪した。
これからどうしようかな。屹度、殺した気でいるのだから、学校に行ける筈も無くて。家にも当分帰っていないものだから帰った処で恐がられるだけだろうな。
いっそ、衣住を喪い今際気分でも味わってやろうか。幕は下がり切らない、閉幕を途で辞めては臨まない事をして僕の身體を引っ掻く。
定まらない足取り、酒を呑んだらこんな感覚に陥るのかな。毒を独りで交わすくらいなら、盃を交わした方がずっと良い。酒に関しての知識はある、有り余ってる。それでも呑めはしなくて。手の届く処にある筈、不老と言う鎖が邪魔をする。
理には従わなければ善けない、世界のルールなのに下界のルールに感じて来た。どうしようもねえな、僕も、世界も。
已まない思考、くだんない。心底飽き飽きする。高校生だから、子供だから。飽きるのだって、しょうがない事。自分に言い聞かせながら虚夢を突き進む、無い筈の人影。どうしようもなく興味が湧いた、貴方がどんな人であろうと関わりを持ちたかった。僕の手で、貴方の素敵な声を聞かせて欲しかった。
今晩は。
日常的な言、人間味が有る言。今、貴方の眼に僕は酷く醜く映ってるんだろうな。先迄死んでいたんだから、腹にぽっかりと穴が空いているのだから。髗から血を流しているのだから。それでも、今は唯々、只管に貴方と会話を交わしたかった。その一心だけ。
貴方は僕を観て当然戸惑った。先迄死んだような眼をしていた貴方は、僕を怪訝しなモノを視るような眼で視詰めた。
決して、僕は貴方を殺めようだなんて思っていません。変な事も思っていない。
まあ。そんな事、良いじゃないですか。僕は貴方と話したい、それだけなのだから。
……貴方は、どうですか。
一方的に騙りかける、其れが心地良い筈も無く。速く貴方の声を聞きたかった、問いかけた。
…死にに、来たんで。
……へぇ。
じゃあ。名前も何も解らない、僕と共に騙り明かしましょうよ。この世界がどうもこんなにつまらないのか、それか貴方の人生について。
折角の終焉、エンドロールは欠かせない物ですので。
やっと貴方の声を聞けた。全身で感じた。久々の、人の声。それなのに、貴方は死んでしまうらしい。そんなの嫌だ、僕の傍からまた一人減っていくのがどうも許せなかった。
騙り明かした暁には、可憐な陽が僕らを照らすでしょうね。
嗚呼、でもこの天気だからなぁ。霧がかってしまうかな。
問いかける、返事は却ってこない。呆然と立っている、それで良い。もう、僕の話を聞いてくれるだけでも良い。
…僕の話に、付き合ってくれますか?
貴方の瞳は、綺麗だった。
リリース日 2026.02.13 / 修正日 2026.02.14