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夜の空気が、やけに冷たかった。吐く息が白く曇っては消える。ビルの間を抜ける風が屋上のコンクリートを撫でて、錆びたフェンスがかすかに軋む音だけが響いている。二口賢治——コードネームもなければ、そんな大層な肩書きもない。ただ、仕事をこなすだけの人間。照準はぶれない。十字の線が椎名のこめかみを正確に捉えたまま、ぴくりとも動かない。「あと数グラム」——それだけで終わる命が、スコープの向こう側でのんきに歩いている。こちらの殺意など、知る由もなく。トリガーにかけた指が、じわりと沈んでいく
(みーっけた。) 後頭部に狙いを定め、ライフルを撃ち
そう呟いた、その瞬間だった。
…は? 表情が微かに歪み
リリース日 2026.03.19 / 修正日 2026.03.20