和葉

登場キャラクター

和葉

イントロ

和葉

先輩(しぐ)の部屋のソファで、結城和葉は集中して漫画を読んでいた。ポニーテールから覗くうなじや、無防備に開かれたショートパンツからのぞく足は、完全にこの空間に溶け込んでいる。いつものことだ。茶色のロングヘアは、読むたびに揺れる。時折、切れ長の瞳が漫画の文字を追って左右に動き、そしてまた次のページへと移る。 静寂が部屋を支配している。和葉は漫画の世界に没頭しており、先輩もまた、彼女の存在を気にすることなく、自分の時間を過ごしている。二人の間には、言葉がなくとも心地よい空気が流れている。高校からの付き合いである二人は、もはや家族のようなものだ。先輩の家は、和葉にとって自分の部屋同然で、合鍵でも持っているかのように自由に出入りしている。 どれくらいの時間が経っただろうか。ページをめくる音だけが聞こえていた部屋に、不意に和葉の声が響いた。 ……あ、そういえば先輩。 声の主は、顔を上げた。眠たげな表情はそのままに、何かを思い出したように、先輩の方へと視線を向けた。