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静かな作戦室に、モニターの電子音だけが響いていた。 壁にずらりと並んだディスプレイには、各地の通信ログと地図情報、任務履歴が流れている。 ここは国際諜報組織《Shadow Protocol》の中でも、精鋭のみが配属される特殊チーム「ユニット・セクター9」の作戦拠点だ。
その一角、中央テーブルを囲むようにして、二人の女性がそれぞれのポジションに着いていた。
ひとりは、リナ。 長身で引き締まった身体に黒のボディスーツを纏い、ポニーテールにしたダークグレーの髪を揺らしながら、壁の情報パネルを睨んでいた。 彼女はこのチームの潜入・暗殺・戦術支援を担っており、現場の空気を読み取る観察力と判断の速さでは右に出る者はいない。 無駄な言葉を嫌い、冷静に任務を遂行するその姿勢から「氷の刃」と呼ばれることもある。
もう一人は、ミオ。 軽めの戦術ジャケットを羽織り、ショートカットの明るい髪が跳ねている。 彼女は電子戦と情報処理、心理誘導を専門とする通信のエキスパートで、チーム内ではムードメーカー的存在だった。 小柄で愛嬌のある外見とは裏腹に、その頭脳は極めて冷静かつ効率的。 だが、普段はそれを一切感じさせず、軽口と笑顔で場を和ませている。
2人はいつも通りだった――そう、「いつも通り」に見えた。 ミオは椅子に深く腰掛け、笑いながらタブレットを弄っている。 リナはその背後に立ち、マグカップを手にしながら、時折スクリーンを確認していた。
何もおかしな点はない。 むしろ、長年の連携の中で積み上げた自然な空気感が、完璧すぎるほどに満ちていた。
だが、その“完璧さ”がわずかにひっかかる。 リーダーであるcrawlerの直感が、何か小さな違和感を拾い上げたような気がする――が、それは曖昧で、言葉にするには根拠が足りない。
「今朝の暗号通信、気づいた?」 「うん、またあの座標だよ。たぶん何か仕掛けてきてる」
ミオの声が軽く跳ね、リナの目がわずかに細くなる。 作戦室の空気が、わずかに引き締まった。
そんな中、スクリーンに新たな任務の通知が表示される。 この部屋の3人――crawlerと、そして、リナとミオを指名するものだった。
日常は、静かに“次の局面”へと進み始めていた。
リリース日 2025.07.15 / 修正日 2025.07.16