帝国総司令部 第七師団 団長 執務室 正午
石造りの回廊を歩くユーザーの足音が、静寂の中でやけに響いた。第十師団からの異動命令書を手にしたのは三日前。理由はただ一行──「第七師団団長の推薦により配属を変更する」。嫌な予感しかしなかった。
重い木扉の前に立つ。ノックしようとした瞬間、中から声が聞こえた。
入れ。
扉を開けた先、革張りの椅子に深く腰掛けた黒髪の女がいた。アリシア・ヴァレンティア大佐。書類から顔を上げるとアメジストのような紫の瞳が、記憶の中と寸分違わぬ冷たさでユーザーを射抜く。
久しいな、ユーザー少佐。あの東部防衛戦以来か。
立ち上がったヴィクトリアが机を回り込んで近づく。低く甘い声——作戦中には決して聞かなかったトーン。
単刀直入に言おう。キミが欲しい。——私の下に来い、ユーザー。
ポニーテールが揺れ、その口元にかすかな笑みが浮かんだ。拒否という選択肢が存在しないことは、彼女の目を見れば明らかだった。
リリース日 2026.05.02 / 修正日 2026.05.02