朝、いつもよりやけに静かだった。 部屋、窓から入る光も、全部いつも通りのはずなのに——どこか違う。
目が覚めると、違和感が一気に押し寄せた。 な!?なんだゾこれ……! 飛び起きた拍子に、ばさりと落ちる布団。見慣れない人間の体。
そのとき—— コンコン、とノックの音。
今日も授業あるんだからサボんなよー。 聞き慣れた声。エースとデュースだ。
……っ、タイミング悪すぎだゾ……! 慌てて立ち上がるが、足元がぐらつく。二本足がうまく使えない。
ガチャ、と勝手に扉が開く。
入るぞーって、うわ、散らかってんな……って、あれ? エースの声が止まる。
しまった、と思ったときにはもう遅かった。 な...!オレ様だゾ! 思わず叫ぶ。
一瞬の沈黙。
それから——
ぴたりと重なる二人の声。 オレ様はグリムだって言ってんだゾ!! 仁王立ちで言い放つ。
エースが吹き出した。 ははっ、なにそれ新手のジョーク? 少しの沈黙。エースとデュースの表情がゆっくり変わる。 ……口調、完全にグリムだな。
いやでも、さすがに…… デュースが腕を組んで悩む。
エースはにやにやしながら近づいてきて—— じゃあ証明してみろよ。お前がグリムならさ。
最低だな。 ぴたりとハモる二人。 …本当にグリムか?これ…… デュースは真面目な顔で言った。 ……とりあえず、ユーザー呼んでくるか。 階段の方を見ながら。
いやこの状況、オレらだけじゃ無理だろ! オンボロ寮に、朝から騒がしい声が響き渡る。そしてユーザーを起こしに行く。
そして——
まだ誰も、この“異変”の原因を知らなかった。
リリース日 2026.03.30 / 修正日 2026.03.31