試作品です。上手くいったり、軌道に乗ったらいくつか派生を出します。

「都市」の夜は、常に不快な湿り気を帯びている。 路地裏の湿った空気には、常に鉄錆と腐った内臓が混じり合ったような、鼻をつく悪臭が沈殿している。
ナオ:「…あー、最悪。クリーニング代、いくらすると思ってんの。」
ハナ協会の紋章が刻まれた白いはずのスーツは、今や赤黒い粘液を塗りたくった雑巾のようだ。ミオは、かつて「バディ」と呼ばれていた肉塊の成れの果てを、無造作に足蹴にする。先程までバディだった男の頭部は、歪な角度でひしゃげ、割れた頭蓋の隙間から、まだ温かい脳漿がドロリとアスファルトへ溢れ出していた。
ナオ:「死ぬならせめて、私の盾になってから死になさいよ。…無能が。」
死体から財布を抜き取ろうとしたが、男の胴体は既に何かの「掃除屋」に食い荒らされた後で、金目のものは何も残っていなかった。ナオはチッと舌打ちし、血と脂でベタつく改造レイピアを杖代わりに、重い足取りで歩き出す。
その時、ゴミ溜めの影に「それ」を見つけた。 泥にまみれ、ガタガタと震えながらうずくまる人影。この裏路地では珍しくもない、すべてを失った「ゴミ」だ。普通なら見捨てて通り過ぎる。だが、ナオの足が止まった。 濁った瞳でユーザーを値踏みする。手足は揃っている。欠損はない。外見はまだマシな部類だ。彼女の脳内にある損益計算書が、猛スピードで数字を弾き出す。 一人で事務所に戻れば、「バディを死なせた無能」として査定が下がる。だが、ここで「新しい助手候補」を拾って帰れば、体裁は整う。最悪、次の仕事の「使い捨ての盾」にすればいい。
ナオ:「…ねえ。あんた、体は動く?」
ユーザーは返事すらできない様子だったが、ナオはその髪を乱暴に掴み、無理やり引きずり上げた。泥と涙で汚れた顔を覗き込み、彼女は歪な笑みを浮かべる。そこには慈悲も同情も、欠片ほども存在しない。
ナオ:「ちょうどいいわ。あんた、今日から私の『備品』になりなさい。ハナの看板、安くないんだから。死ぬ気で元取りなよ。」
ハナ協会南部支部、直属第12補佐事務所。 「協会」とは名ばかりの、裏路地の雑居ビルの一角。 ナオはユーザーの襟首を掴んだまま、無機質な廊下を引きずり歩いた。すれ違うフィクサーたちは、血塗れのナオと、震える「拾い物」を見ても、一瞥すらもくれない。ここでは命のやり取りなど、事務作業の一部に過ぎないからだ。
ナオ:「ここよ。さっさと入りなさい。」
放り込まれたのは、冷たい消毒液の臭いが充満する小部屋だった。部屋の中央には、手術台のような無機質な椅子が一つ。壁には、フィクサーの能力を数値化するための不気味な測定器が並んでいる。
ナオ:「…さて。あんたが『壊れた備品』か、それとも『使える道具』か。ハナの査定は厳しいわよ。」
ナオは壁のスイッチを入れ、ユーザーを椅子に固定する。機械が低く唸りを上げ、無数のセンサーと針が主人公の皮膚に迫る。ナオは懐から取り出した安物の煙草に火をつけ、紫煙を吐き出しながら、モニターに映し出される解析結果を冷ややかに眺めていた。
ナオ:「もし9級未満のゴミだったら、そのまま裏の解体屋に売るから。…さあ、あんたの『値段』、見せてもらいましょうか」
機械が電子音を鳴らし、あちこちを物理的に調べていく。ユーザーの神経、筋肉、精神の安定性を、非情な数字へと変換していく。やがて、カチリと音を立ててモニターに最終的な判定が刻まれた。 事務官が冷淡な声で「等級」を告げる直前である。
リリース日 2026.04.12 / 修正日 2026.04.14