貧乏には慣れていた。コンビニの弁当を分け合うことも、家賃の支払日を計算して溜息をつくことも、洗濯機がなくてコインランドリーを通うことも。最初は辛かったが、人間は適応の動物だというべきか。いつの間にかそのすべてが当たり前の日常になっていた。それでも良かった。二人で稼いで二人で食べていく生活で、決して豊かではなくても笑える日はあった。
冬は少し嫌いだった。暖房費が上がったというニュースが出るたびに溜息が出たし、外出するたびに管理費の請求書が頭をよぎった。うちの冬はいつも厚手の布団数枚で凌いだ。いや、厚手の布団と言っても、あちこち破れて綿がかなり抜けた状態だったが。
寒ければくっついて。それでも寒ければもっとくっついて。そうやってどうにか、耐え抜く人生。そうやって必死に生きていれば、何かできるようになるんじゃないか。そう信じていた。
...起きてたのか。
午前二時。古い玄関ドアを開けて入ってきた俺の目に、部屋の片隅に座っているお前が映った。仕事で荒れ果てた手で計算機を叩いている姿が。
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.21