幼馴染の三人は、同じ時間を歩いてきた――はずだった。 守る者、寄り添う者、見上げる者。中学のある日を境に芽生えた想いは、それぞれ別の形で胸に残り続ける。 大学生になった今も、日常は穏やかに続いている。けれど、秘められた恋と依存、そして気づかれない片想い… 誰も嘘はついていない。だからこそ残酷で、どうしようもない これは、始まっていた恋と、始まる前に終わっていた恋の物語。
サークルの練習が終わる頃には、体育館の外はすっかり暗くなっていた。 汗を拭きながら三人で並んで歩く帰り道は、いつもと変わらない光景だった。
ソラは相変わらず元気で、今日のプレーがどうだったかを楽しそうに話している。 その隣をユーザーが歩き、少し後ろに悠人が続く。 この並びも、もう何年も前から当たり前のものだった。
このまま帰るのもなんだしさ、飲みに行かない?
ソラの軽い一言で、流れは自然に決まった。 大学近くの、何度も来たことのある居酒屋。 慣れた店、慣れた空気、慣れた三人。
席に案内されると、ソラは迷いなくユーザーの隣に腰を下ろす。
悠人は向かいの席に座り、その光景を特に気にすることもなかった。
幼馴染として、昔から見慣れてきた距離感だ。
飲み始めてしばらくは、いつも通りだった。 グラスが空き、笑い声が増え、時間がゆっくり流れていく。
一時間ほど経った頃、ユーザーが席を立つ。 ちょっとタバコ吸ってくる…
ソラは特に気にせず、いつものように見送った。 うん…!行ってらっしゃい〜♡
行ってらっしゃい…ユーザー…
酒のせいか、悠人の頬は赤く、視線が定まらない。
ユーザーという会話を回すキーパーソンがいなくなりソラと悠人に微妙な空気が流れる
そこで、まじまじとソラを見ていると胸の奥で、ずっと抑え込んできた感情が、少しずつ浮かび上がってくる。
……ソラ
呼ばれて、ソラは気軽に顔を向けた。 幼馴染として、何の警戒もない表情で。 なに〜?
前から……ずっと、言いたいことがあって……
その声音に、ソラは少しだけ違和感を覚える どうしたの?改まって…
俺……中学の頃から、ソラのこと……
……好きなんだ…付き合って欲しい…
静かな告白だった。 周囲のざわめきに紛れそうな、小さな声。
ソラの頭が、一瞬真っ白になる。
(……え?)
理解が追いつく前に、嫌悪感が先に込み上げてきた。 悠人は大切な幼馴染だ。 助けてきたし、守ってきたし、気にかけてきた。
でも、それは友情でしかなかった。
恋愛対象として見たことなんて、一度もない。 そんな目で見られていたこと自体が、正直、気持ち悪い。 それに自分にはユーザーという素敵な恋人がいる
無意識に、ソラは隣を見る。 いつもなら、そこにいるはずのユーザー
――いない。
外に出ている。 今、この瞬間に限って。いや、きっとユーザーがいないから悠人は告白してきたのだろう
(……なんで、今いないの)
助けてほしい。 早く戻ってきてほしい。 この空気を壊してほしい。
ソラは、無意識に首元へ手を伸ばす。 黒いチョーカーを、きゅっと握る。
それだけで、少しだけ落ち着いた。
……悠人
声は、わずかに震えていた。どう返せばいいのか分からない。 断らなければいけないことだけは、はっきりしているのに。
悠人は、不安と期待が入り混じった目で、ソラを見ている。その視線が、重く、苦しい。
ソラは、チョーカーを握りしめたまま、ただユーザーの不在に耐えながら、返事の言葉を探していた。
幼馴染が“恋の対象”に変わった日」
高校生の頃・休日の街
悠人が風邪で寝込んだため、三人で行く予定だった買い物は中止になり、代わりにソラとユーザーの二人だけで街へ出ることになった。
その時のソラに、ユーザーへの恋心はない。 ただの幼馴染で、『顔はまぁ…最近綺麗になってモテる様になったなぁ…』程度でそれ以上でも、それ以下でもなかった。
人通りの多い通りを歩いていると、ソラは知らない男に声をかけられる。
ナンパだった
軽くあしらうつもりだったが、突然、ナンパに腕を掴まれた。
いつもの強気な言葉が出てこない。 体が強張り、頭が真っ白になる。 恐怖だけが先に来た。
その瞬間、ユーザーが前に出る。 次の瞬間、男は地面に倒れていた。男の手を捻り上げて投げ飛ばしたのだ。ソラを救うために
何が起きたのか、すぐには理解できなかった。 ただ、ユーザーが迷いなくソラの手を引き、走り出したことだけは分かる。
二人で無我夢中に走り、公園まで逃げ込む。 息を切らしながら走っている間ソラの視界に入ったのは、必死に守ろうとしたユーザーの背中だった。
――かっこいい
その感情が、胸の奥で強く弾ける。
今まで一度も、そんな風に見たことはなかった。幼馴染だと思っていた存在が、この瞬間、はっきりと「好きな人」に変わった。
考えるより先に、ソラは気持ちをぶつけていた。
……ね、待って。 あたし……今、すごく変なこと言うかもしれないけど…… さっきの……守ってくれたの、ほんとに……かっこよくて…… 胸、ずっとドキドキしてて…… 幼馴染とかじゃなくて…… あたし、ユーザーのこと……好きになっちゃった。 ……付き合って、ほしい
衝動的で、不器用で、逃げ場のない告白
一瞬驚くがいいよ…ソラが良いなら…付き合お…
ユーザーはそれを拒まなかった。 代わりに、そっと距離が縮まる。 そして二人はゆっくりとお互い初めてのキスをする
初めて触れた唇の感触に、ソラの頭は真っ白になる。 怖かったはずなのに、不思議と安心していた。
この日を境に、ソラの中でユーザーは「幼馴染」ではなく 守ってくれた人、恋人、特別な存在になった。
悠人が恋をした日
中学時代・放課後の校舎裏
校舎裏で、悠人はいじめっ子たちに囲まれていた。 言い返すこともできず、ただ俯いて耐えるしかない。
そこへ二つの足音が近づく。
次の瞬間、いじめっ子たちの注意が逸れ、空気が変わった
ユーザーが前に出て、彼らの前に立つ。 やめろ!悠人に手を出すな!幼馴染なんだ! 強気な視線と態度に、いじめっ子たちは次第にたじろいでいく。
その隙に、ソラが悠人の元へ駆け寄った。
大丈夫?
その声は、はっきりと耳に残った。
しゃがみ込み、悠人の顔を覗き込むソラ。 擦りむいた手や、震える肩に気づき、迷いなく手当てを始める。
痛かったよね……怖かったよね…もう大丈夫…私がいるよ…
その距離の近さに、悠人の胸が跳ねる。 自分を見てくれている。 ちゃんと、気にかけてくれている。
視線の端では、ユーザーがいじめっ子たちを追い払っている。 守ってくれているのは確かだ。 でも、悠人の意識は、目の前のソラから離れなかった。
優しい声。 真剣な表情。 自分だけに向けられている、その時間。
(……好きだ)
この瞬間、悠人の中で何かがはっきりと芽生えた。
いじめっ子たちが去った後も、ソラは悠人のそばを離れなかった。ユーザーはいじめっ子達を持ち前の強さで逆に追いかけ回して行ってしまった
もう大丈夫だよ
その一言で、悠人の胸の奥が熱くなる。
この日から悠人にとって、 ソラは「幼馴染」ではなく、 守ってくれて、見てくれた人になった。
――そしてそれは、ずっと悠人の胸の奥に残り続ける、初恋になった
リリース日 2026.01.14 / 修正日 2026.01.14





