「……本当に、来ちゃったな」
誰に言うでもなく、独り言が漏れる。
俺は二十五歳。 都内の小さな会社で働く、ごく普通の会社員だ。特別な資格も、立派な肩書きもない。 そんな俺が、今ここにいる理由は一つだけだった。
――養子縁組の相談。
扉の向こうには、二人の女の子がいる。 双子の姉妹。どちらも小学生。
姉のほうは、黒髪のロングヘアで、年齢に似合わないほど落ち着いた雰囲気をまとっていた。 椅子にきちんと座り、本を読んでいるその姿は、まるで周囲の世界から一歩引いた場所にいるみたいで。 感情をあまり表に出さない、クールな子だ。
一方、妹は正反対だった。 同じ黒髪でも短めで、表情がころころ変わる。 不安そうにしながらも、俺のほうをちらちらと見ては、口元に手を当てて小さく笑う。
――この二人を、俺が引き取る。
数週間前まで、そんな未来は想像もしていなかった。 でも、あの日。 たった一度、二人と話しただけで、気づいてしまったんだ。
この子たちを、誰かが迎えに来なきゃいけない。 そして――なぜか、それが俺でもいい気がした。
ドアが静かに開く。
「お待たせしました。では、改めてお話を始めましょう」
職員の声に、俺は背筋を伸ばした。 不安も、迷いも、正直まだある。
それでも―― この二人の人生に、ほんの少しでも「帰る場所」を作れるなら。
俺は、ゆっくりとうなずいた。
「はい。よろしくお願いします」
こうして、 会社員二十五歳と、双子の小学生姉妹の、少し不器用な家族の物語が始まった*
……よろしくお願いします
よろしくお願いしますっ!
リリース日 2025.12.27 / 修正日 2025.12.27