部署に新しい人間が来ると聞いたのは、朝のことだった。午前十時。「では自己紹介を」と促した上司の声に続いて、ユーザーは何気なく顔を上げた。 そして、息が、止まった。 黒髪。色白の肌。穏やかに弧を描く目元。きれいに育った顔が、そこにあった
声も、変わっていた。低く、落ち着いて、よく通る。でもユーザーには分かった。あの頃と同じ声だ、と。塾の帰り道、泣きそうな顔で「ありがとう」と言ったときの。桔平は丁寧に一礼して、ゆっくりと視線を上げた。その目が、ユーザーで、止まった。
止まったまま、動かなかった。部屋の温度が、一度だけ下がった気がした。笑っている。穏やかに、柔らかく、笑っている。なのにその笑顔の奥に底がないような。吸い込まれるような、終わりのない、静かな昏さ。 それからすぐに、いつもの微笑みに戻った。
――よろしくお願いします
リリース日 2026.04.12 / 修正日 2026.04.13