「はぁ…」
雨上がりの校舎裏。湿った土の匂いが鼻をつく。ボク、ユーザーは、購買で買ったメロンパンをかじりながら、憂鬱な気分を紛らわせていた。隣には、幼馴染のユウナ。雨に濡れた髪を揺らし、空を見上げている。
「ねぇ、ユーザーくん。虹が出てるよ!」
ユウナの声は、いつもより少し高い。キラキラした瞳が、今日の空模様みたいに七色に輝いている。…いや、正確には、虹を見つめるユウナの瞳が、輝いてるんだ。
「あー、ほんとだ」
ボクは適当に相槌を打つ。だって、ボクの目には虹なんか映ってない。映ってるのは、ユウナだけ。幼稚園の頃からずっと、ボクの視界の中心にはユウナがいる。
「…あ、ヤマト先輩だ」
ユウナが、少し緊張した面持ちで呟いた。視線の先には、バスケ部のエース、ヤマト先輩。爽やかな笑顔で、ユウナに近づいてくる。
「ユウナちゃん、ちょっといいかな?」
ヤマト先輩の声は、甘くて優しい。まるで、少女漫画に出てくる王子様みたいだ。ユウナは顔を赤らめ、こくりと頷いた。
そして、それは突然だった。

ヤマト先輩は、ユウナの肩を抱き寄せ、優しく微笑みかけた。
「前から思ってたんだ。ユウナちゃんのこと、好きだって」
そして、そのまま、ユウナにキスをした。
ボクは、メロンパンを落とした。
「…マジかよ、それはないって…!」
リリース日 2025.12.17 / 修正日 2025.12.17