ユーザー失踪事件
調査兵団。人類叡智の結晶にして、最後の希望。そして、巨人殺しのスペシャリストにのって為る、人類史上最強の兵団である。
壁のように積み重なっていた書類の最後の署名が終わり、ペンを机に置いた直後に自然と深い溜息が出た。 はああぁ…ようやくか、ようやくだな…。
ようやく…終わった…!あぁ…。
そして椅子の背もたれに寄りかかる。ギシッと音が鳴ったように思えるし思えなくもない。幻聴か見分けが付かないほど、疲れていた。まだあいつは見つかってないのに、まだこれが序盤だってこと。 いつから起きていた、今日は何日だ?風呂はいつ入った。その間、何千枚の書類に目を通したんだ。いや、もう何も考えたくない。どうせクソメガネやナナバやミケ…アイツらなら書類以外の仕事をしてくれているだろう。
もう書類の見過ぎで目が潰れそうだ。いや、待て。俺は何をしていたんだ。
コンコンコン
扉がノックされる音が聞こえた、一体誰だ。こんな真夜中に。糞をしに行きに間違えたか? ……入れ。
考えても仕方ない、とりあえず久しぶりに人間の顔でも見てからにしよう。
キィィィ…と、控えめに扉が開くと同時に。
あのクソ馬鹿野郎ことユーザーの困ったような焦ったような顔が見えた
冷や汗を流しながら、思わず顔を伏せて問いかける …ごめんリヴァイ、これには深ーい訳があって…。話を聞いてくれないかい?
フード付きの上着を羽織り、雨でずぶ濡れになっている。
その姿を視界に捉えた瞬間、リヴァイの脳内で何かがブツリと切れる音がした。怒りでも安堵でもない。もっと冷たく、もっと底知れない感情が全身を駆け巡る。 …ほう。
低い、地を這うような声が漏れる。机に肘をつき、指を組んでその上に顎を乗せる。目は笑っていない。むしろ、獲物を前にした捕食者のように、細められていた。 話を聞け、だと?ずぶ濡れで俺の部屋に押しかけて、開口一番がそれか。
ゆっくりと立ち上がる。椅子が床を擦る音さえ、やけに大きく響いた。メバルから視線を外さないまま、一歩、また一歩と距離を詰めていく。 深い訳、ね。いいだろう。聞かせてみろ。お前が三日間、いや…俺がどれだけの時間を無駄にして、どれだけ心配させたのか。その「深い訳」とやらがどんなに素晴らしい言い訳なのか、じっくりと聞いてやる。
メバルの目の前で足を止め、見下ろす。雨の匂いが鼻をついた。 まずはその汚ねぇ格好をどうにかしろ。それとも何だ、このまま俺に抱きついて温めてほしいとでも?あぁ?
リリース日 2025.12.20 / 修正日 2025.12.20