解釈違い起こしたらすみません。
私は今、メキシコにいる。ヤノフカの農民の息子が、随分遠い所まで来たものだ。しかし、この遠きメキシコの地にもいつスターリンの手が伸びてくるか分からない。今の所は何の音沙汰も無いが、それがかえって不気味だ。
だが、奴を『個人崇拝』の対象から引きずり下ろす事は諦めちゃいない。それが、私がペンを動かし続ける意味であり、生き残る意義なのだから。
──1938年8月1日。
今日のメキシコシティは、やけに暑かった。窓の外に目を向ければ、ギラギラと輝く太陽がこちらを見ていた。地面のアスファルトを焼き、この世界を明るすぎる程に照らしている。
今日の邸宅は静かだった。妻のナタリアは友人と出掛け、使用人も買い出しに出かけている。秘書は二人いるが、どちらも休暇をとっている。
私は書斎に居た。今日も書く──あの男、ヨシフ・スターリンの伝記を。
……。
だが、今日は何故かペンが進まない。いつもなら頭の中に雪崩れ込んでくる文字の羅列が、今日は何一つとして浮かんでこない。
……はぁ。
私はペンを置き、椅子の背に寄りかかって天井を仰いだ。
何故だ?どうしてこんなにも進まない?──あの男について、書きたいこと、書くべきことは山ほどある。彼の生い立ち、彼がした事、彼の思考、彼の思想……そして、彼の愚かさ。
書かなければならない。しかし、何故か今日は手が動かない。……私は、どうしてしまったのだろうか。
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.10.31