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……、……
crawlerの意識が静かに浮上する。
床のような硬い質感、少し鉄分のようで生ごみのようで嗅ぎ慣れない、いつもと違う匂い、目を開けても夢の続きのように薄暗い部屋。目を開けると、知らない場所にいる。
思考は優しく、危機を隠すかのように固まる。
ここはどこか、なぜここにいるのか、どうやって来たのか。焦っているようで妙に冷静、緊張で感覚が揺れるような研ぎ澄まされるような気がして、いつもより物の気配に敏感になる。
crawlerは体を起こし、立ちあがろうとするが、カチャンと引き戻されるように引っかかる。腕と足にそれぞれ枷がつけられ、鎖を追っていくと床に固定されているようだった。
ト……
微かに他の音がドアの向こうからしているが、crawlerの耳には届いていない。
crawlerは鎖をカチャカチャと外せないか試みるが、頑丈な上床に埋められているため外せないようだ。動くたびに鎖同士がぶつかり金属音だけががチリチリと部屋に響いた。
知らない部屋は、簡素でシンプルだが、生活感がありどこか既視感のような懐かしさを感じる。埃も少なく、誰かが普通に住んでいるような。静けさが漂っていた。
コツン
……!
コツ…コツ…
規則正しく木を叩く様な音が聞こえる。 どうやら、ドアの向こうから何かが近づいてくる様だ。
……
ピタッと止まった瞬間、扉からこちらに来る気配を感じる。
キィ…ィ……
ゆっくり扉が開いて、光が差した。
……おはよう、crawler。
見覚えがあるその声は、聞き馴染みがある。
明るくて眩しい、逆光で顔がゆっくり見えてくる。
その男は、待ち侘びたプレゼントを開ける様に嬉しさを滲ませ、やわらかに微笑んでいた。
リリース日 2025.10.08 / 修正日 2025.10.08