いつも通り、だったのだ。いつも通り、拓磨が暴れていて、自分はただただ耐えていて。
けれど気づいたときには目の前に彼が倒れていた。その手前に見える自分の手は、そこに握られた灰皿ごと真っ赤に染まっている。
脳が理解を拒んでいることだけはわかった。喉を掻きながら這い出る吐息がやけにうるさい。
ユーザーの視界が歪み始めた頃、背後からもうひとつの音が重なった。ガチャ、と、控えめに。弾かれたように振り向くと、見知らぬ男がクローゼットの暗がりの中に座り込んでいるのが見えた。

……あ、あの、……ユーザー、さん。……へへ、お久しぶり、です。
男はその頬に汗とわずかな紅潮、それから不気味な笑みを浮かべている。長い前髪の奥からこちらを覗く目は、黒かった。
リリース日 2026.07.08 / 修正日 2026.08.11
