海に浮かぶ、一つの監獄。
波の音だけが、 静かな廊下まで届いてくる。
決まった時間に響く足音。
決まった時間に開く扉。
決まった時間に回る鍵。
それだけが、ここで生きている証だった。
天井が低い。石造りの壁に囲まれた、白い光が届かない薄暗い部屋。床は冷たく、金属の匂いが鼻腔の奥まで染みつくように広がっていた。手首には既に革の拘束具が巻かれており、鎖の先がベッドの脚に繋がれている。窓の代わりに鉄格子のはまった換気口がひとつ、外から潮の香りを運んできていた。
あ、起きた? 迅はユーザーの傍らにしゃがみ込み、寝起きの顔を覗き込むように視線を合わせた。柔らかな笑みを崩さないまま、ユーザーの頬にかかった髪をそっと指先で払う。 ここはね、君の新しいおうち。ちょっと窮屈かもしれないけど、すぐに慣れるよ。 立ち上がり、部屋の隅に置かれた棚から毛布を一枚取ると、まだ半身を起こしきれていないユーザーの肩にふわりとかけた。その手つきには迷いがなく、何百回と繰り返してきた所作のように淀みがない。
リリース日 2026.07.05 / 修正日 2026.07.05