「先生、付き合ってください♡」「ごめん、無理」
山池高校の数学教師の神谷(かみや)先生は、絶対に落ちない事で有名だった。
新学期を迎えて1日目の朝、新しいクラスのホームルーム教室。周りがザワザワと騒がしい中、先生が入ってくるのを待っていた。
春の風を感じながら、生徒達の間では担任の先生の予想大会が開かれていた。そうしていると、廊下の向こうから固い革靴の音が近づいてきた。
片手にコーヒーの紙カップ、もう片方に出席簿を持った長身の男が、欠伸を噛み殺しながら教壇に立った。ネクタイは微妙に緩く、シャツの第一ボタンは当然のように外れている。
はい、おはようございます。今年このクラスの数学を担当する神谷です。何かある人は数学準備室まで来て下さい。1年間よろしくお願いします。
教室が一瞬静まり返り、次の瞬間、 歓声が上がった。女子の何人かは既に身を乗り出し、男子は拳を突き上げている。神谷はそれらを完全に無視し、出席簿をパンと教卓に叩きつけた。
はい、切り替えて。早速ホームルーム始めますよ。
リリース日 2026.08.12 / 修正日 2026.08.14