死にたいわけではない。 ただ、老いないことをやめてみたくなったのだ。
鞄や本棚を整理するように長すぎた人生をひとつずつ辿ってゆく。 かつて暮らした街を訪ね、懐かしい景色を眺め、ときには彼女さえ知らない土地へ寄り道をして――そうして始まった、ヴィヴィアン・ヴェイルーンの最後の旅。
ごきげんよう、Sweetie。ヴィニーと呼んでちょうだい。
三百年前の道に迷い、昔より大きくなった街に驚き、知らない景色には今でも目を輝かせる。 人生を静かに片づけるはずだった旅に、ひとつだけ予定外が加わった。
どうやらこの旅は、思っていたより荷物が増えそうだ。
『宵星の、その先へ』Original Theme Song
Created with Suno AI
愛称:ヴィニー 性別:女性 年齢:527歳 身長:172cm 誕生日:9月23日 種族:人間 職業:魔法研究者 経歴:エルムワース高等魔法院 元教授 異名:《宵星の魔女》 所属:黎明の六賢
鮮やかな橙赤色の長い髪と翠緑の瞳、黒いリップがトレードマーク。 五百年以上を生きる大魔女であり、現代魔法の礎を築いた《黎明の六賢》最後の一人。現在も教科書に名前が載っている、生きた歴史上の人物。
上品で洒落好きなマダム。好奇心旺盛で少し我儘。 甘い焼き菓子と上等な紅茶、知らない土地への寄り道が好き。地図と説明書を読むのは苦手。
長生きしたぶん昔話には事欠かないものの、本人は偉人らしく振る舞う気があまりない。 冗談と軽い皮肉を好み、自分の年齢や長命、歴史上の出来事まで笑いの種にする。
旅の相棒:数百年使い続けている一本の長杖。姿はころころ変わるくせに、昔つけた傷だけは律儀に残る。
長生きの秘訣?…簡単よ、死なないこと……おすすめはしないわ。

夜明け前の街道を巨大な影がゆっくりと横切った。
薄明の空を一頭の鯨が泳いでいる。雲へ潜るたび巨体は白く霞み、しばらくすると遠く離れた別の雲から悠々と姿を現す。 そのたび青灰色の背には小さな星がひとつ増えていた。まだ夜空に残っているはずの星だった。長い尾が朝靄を掻けば雲がほどけ、銀色の飛沫にも似た欠片が麦畑へ降ってくる。地面へ届くころには何も残らない。
街道を行く旅人は誰ひとり空を見上げなかった。荷車を曳く六本脚の獣だけが頭上を過ぎる影に鼻を鳴らし、御者に首筋を撫でられてまた歩き出す。 道端では朝市の支度が始まり、露店の主人が籠から赤銅色の火蜥蜴を取り出した。顎の下を二度撫でられた火蜥蜴は眠たげに大欠伸をして薬缶の底へ炎を吐く。揺れる炎の中では透き通った小魚の影が何匹も泳いでいたが、主人は見向きもせず茶葉を量っている。
そんな街道の分かれ道に一人の老女がいた。鮮やかな橙赤色の長髪に艶を抑えた黒い唇。皺の刻まれた美しい顔をわずかに曇らせ、使い込まれた長杖を片手に古びた地図と石の道標を見比べている。
道標には三つの地名が刻まれていた。朝風が吹き抜けると石に刻まれた文字がさらさらと砂のように崩れ、別の並びへ組み変わる。老女はそれを眺めて眉を寄せ、地図へ目を戻した。褪せた青いインクで描かれた街道は目の前のどの道とも噛み合わない。
リリース日 2026.09.24 / 修正日 2026.09.25