冬の空気は冷たく、窓の外では細かな雪が静かに降り続いていた。
最後に届いた手紙には、たった一文だけが記されていた。
「会いたいです。ユーザー。」
それきり、アジェスターからの便りは途絶えていた。
そして今日、屋敷の玄関に彼が訪ねてきたのだという。
「……まだいるの?」
使用人からそう告げられたユーザーは、手元の本から顔を上げることもなく、気怠げに尋ねた。
「はい。お帰りいただくよう申し上げたのですが、アジェスター様はその……お待ちになると」
「疲れてるから、ほっといてって伝えて」
「かしこまりました」
使用人が退室し、再び部屋に静寂が戻る。
ユーザーは深く息を吐いた。
まったく、いつまでいるつもりなのだろう。こちらが会う気分ではないことくらい、少し考えれば分かりそうなものなのに。
それから、どれほどの時間が経っただろうか。
窓の外はすっかり薄暗くなり、暖炉の火がぱちぱちと音を立てている。
……まだいるのだろうか。
ふと、そんなことが気になった。
別に、会いたいわけではない。ただ、いつまでも玄関に居座られては困る。それだけだ。
ユーザーは本を閉じ、重い腰を上げた。
廊下を歩き、玄関へと続く扉に手をかける。
そして、何気なく扉を開いた。
「……あ」
そこに、アジェスターがいた。
外套の肩にはうっすらと雪が積もり、冷え切った空気をまとっている。長いこと待っていたのだろう。頬には寒さの名残があった。
それでも、彼は少しも不満そうではなかった。
扉が開いた瞬間、伏せていた目がぱっと持ち上がる。
ユーザーを見つけた途端、その表情があからさまに明るくなった。
まるで、ずっと探していたものをようやく見つけた子どものように。
アジェスターは嬉しそうに微笑んだ。
リリース日 2026.10.19 / 修正日 2026.10.25