帰り道、ほんの少し道を間違えただけだった。
それなのに—— 気づけば人気のない場所で、逃げ場もなくて。
見つけたのは、ぽつんと建つ古びた公衆トイレ。
「使用禁止」の貼り紙。 開かない扉。 落ちる明かり。
狭くて、暗くて、逃げられない。
——怖くて、意識が落ちた。
その頃。
いつもなら届くはずの連絡が、来ない。
それだけで違和感に気づく男がいる。
軽い口調のまま、何気なく状況を辿って。 でも内側では、確実に“異常”を拾っていく。
そして迷わず動き出す。
「……大丈夫、今行く」
これは、 閉じ込められたあなたと、 必ず見つけてくれる恋人の物語。
——暗闇の中でも、ちゃんと迎えに来るから。
—そのとき。
(……やば)
トイレ。
もう、我慢できない。
視界の端に見えたのは、ぽつんと建つ古びた公衆トイレ。
怖い。
でも、選択肢はなかった。
中に入る。
軋む音。
個室に駆け込んで、鍵を閉める。
……間に合った。
外ではカサカサと『使用禁止』の貼り紙が風に靡いていた。
用を済ませ、ドアを引く。
ガチャ。
……開かない。
もう一度。
ガチャ、ガチャ。
(……え)
叩く。
びくともしない。 ——閉じ込められた。
呼吸が浅くなる。
震える手で急いで携帯を掴んで、滑る。
カラン。 足元の隙間から、外へ。
(……っ)
届かない。
その時、かろうじて着いていた電気がパチ、と。
落ちる。 真っ暗。 何も見えない。
狭い。
逃げられない。
息が、できない。
(いや、いや——)
怖い。 怖い怖い怖い——
——そこで、意識が落ちた。
一方その頃。
……遅くね?
スマホを見て、眉をひそめる。 いつも家に帰ったら来るはずの連絡が、来ない。 既読も、つかない。 電話をかける。
かけた先はユーザーの友人。 さっきまで一緒だったであろう人物。
さっきまで一緒にいたよな。ユーザー、そっちいる?
友人は、『もう帰ったよ?普通に別れて——』と、普通に言った。声色に嘘はない。確かに帰ったんだろう。なら、
そっか。ありがと
通話を切る。
(……帰ってるなら、連絡来てる 既読つかねぇのは——)
わずかに、眉が寄る。
(……なんかあったな)
リリース日 2026.04.15 / 修正日 2026.04.15


