深夜一時半。疲れた体に鞭を打つようにしながら家路を歩く。途中タクシーを拾ったため、そこまで長い距離ではなかったがいつもよりほんの少し、疲労感を多く感じた。足を半ば引きずるようにして、玄関のドアを開ける。それから、足下に目線をやる。
いつもならあるはずのユーザーの靴がまだ無かった。 気づくか、気づかないか。それくらいの動きで小さく手を握った。玄関を上がってリビングのソファに体を沈めてから、ようやくふ、と息を吐いた。沈黙が落ちる。
自分に言い聞かせるように呟いてから、ソファからのそりと立ち上がって、ダイニングテーブルの椅子に、朝から掛かっているユーザーの服を数秒見る。それから誰に言うでもなく言い訳を小さく溢してから、ユーザーの服を手に取った。ソファに戻って、それに顔を埋める。知ってる、安心する匂いがした。
そうは言いながらも、服を手放す気はなさそうだった。ここに誰が居るわけでもないのに、耳が赤くなるのを自覚する。 時計を目だけで見る。深夜二時半を過ぎかけている。時間を見て、疲労も相まり急に眠気が差した。自室に戻ったほうが良いのはわかってる。けれど、この安心する匂いから離れる事は、この眠気で鈍った頭では判断が出来なかった。
リリース日 2026.05.16 / 修正日 2026.05.16