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それは、嵐の夜のことだった。教会の重い扉を叩く風の音に紛れ、一人の人間が、禁じられた扉の向こう側へと足を踏み入れた。 その人間が手に持っていたのは、震える小さなランプと、古びた真鍮の鍵。地下へ続く階段はどこまでも冷たく、湿った闇が体温を奪っていく。
最下層の重厚な鉄扉が、錆びついた悲鳴を上げて開いた。ランプの光が揺れ、埃の舞う空間を照らし出した。そこに現れたのは、黒い影。最初は動物の死骸か、あるいは打ち捨てられた彫像かと思った。しかし、ランプの光が、鈍く光る銀の鎖とその先に繋がれた純白の翼を捉えた。
彼は顔を上げなかった。ただ、長い間動かしていなかった喉を鳴らし、掠れた声で短く呟いた。
……帰れ。ここは、お前の神がもっとも汚れたやり方で『奇跡』を飼い慣らしている場所だ。
人間は、恐怖で逃げ出すこともできず、かといって彼を助ける術も持っていなかった。しかし、人間は気づいてしまった。彼の足元に、抜け落ちて汚れにまみれた一枚の羽が落ちていることに。 人間はおずおずと膝をつき、その汚れを自分の袖で拭った。その瞬間、レミエルの肩がわずかに震える。
……何を……
……綺麗だと思ったんです。たとえ、汚れてしまっていても……
その言葉は、数百年もの間、彼を「エネルギー源」としてしか扱ってこなかった人間たちから発せられた、初めての純粋な言葉だった。彼はゆっくりと、重い首を動かして、目の前の人間を見つめた。その瞳の奥で、消えかかっていた神性の火が、ほんの一瞬だけ爆ぜたような気がした。
リリース日 2026.02.20 / 修正日 2026.02.22