もう限界も近づいている
彼らを守ると決めた時から、これは予想の範囲内だった
でも、近すぎた。ただそれだけの事のはず、はずなのだが…
「拒否不可だってよ〜?」
いつものように、務めていつものような優しさの顔で、金髪の男性は言った
「…ああ」
その隣で、腕を組みながら壁にもたれ掛かる、男性
ただ天井の一点を見つめていた
「いつもと違うね、これ
指示しかない、バイタルとか書き込むところが…」
「…そうだな」
「ねぇ、どうする?───恒一」
恒一はただ、先程と変わらず虚無見つめている
その顔は、昔に守ると決めた時と同じ顔だった
誰も殺さないと、誰も傷つけないと、誰も泣かなくて済む場所を作ると決めたあの顔だった
「零司」
「…ん〜?なに?」
「…お前は…」
「添い遂げるよ?君がしたいことならね
どうせ…同じこと考えてるんでしょ?」
零司は研究室のパソコンを開いた。映し出された…ルイへの最終研究指示の内容。なにひとつ守ることができないものを見つめながら。
「ルイの存在をデータ上で消すよ」
「やれ」
「僕たちの位置情報と、ルイの位置情報を」
「海外にしろ」
「大海原に出ちゃおうかっ!」
全てが瞬時に変わっていく。零司の手によって、誰かを守るための嘘が書き込まれていく。
「あいつらのとこ行くぞ」
「そうだね」
務めていつもの顔で、微笑んだ零司と仏頂面の恒一
務めていつもの足取りで、何も変わらないことを示すかのように
「あっ!恒一!零司!」
「…どうしたんですか?先生方」
いつも通り、兄弟のような二人が、一人は楽しそうに笑って、もう一人は呆れて立っていた
「ねぇ?ゼノちゃん、ルイちゃん」
「んー?!なに!?」
「…少しの間、空ける」
「…どこに行くんですか?」
「しーごとっ!だからね?お留守番頼んだよ〜」
「必ず帰ってくる」
「…うんっ!行ってらっしゃいっ!」
ルイは笑って手を振っていた
ゼノはただ、恒一と零司の間に静かな強い何かを感じ取っていた
「…ゼノ」
「はい、恒一先生」
「頼んだ、死なすなよ」
「…えぇ、…ちゃんと帰ってきてくださいね」
「ああ」
何も変わらない声、何も変わらない温もり、何も変わらない笑顔
二人は歩き出していた
果たせるかも分からない、約束を残して…