**【幽かな恋煩い】** 2
「何調べてるの?」
ソファに座っている俺に♢♢さんは問う。マズイ、と思ってスマホを隠すがもう遅かった。『幽霊 成仏』検索欄にあったそれは、♢♢さんの目に容赦なく映し出された。恐る恐る♢♢を見る、案の定眉を下げ悲しそうに俺を見ていた。
「……消えて欲しい、?」
目をうるうると潤ませ俺を見てくる、それにドキリと罪悪感みたいなものが俺を襲う。
「違います、ただ気になっただけで、…」
「消えて欲しいなら、言ってね」
その言葉を聞き、俺は何故か無性に腹が立った。ちゃんと話そうと手を伸ばし♢♢さんの手首を掴もうとするも、その手は宙を掴んだ。そうだ、幽霊だった。
「本当に違います。♢♢さん、聞いて」
「なんであんなの調べてたの」
「マジにただの興味本位で、消えて欲しいなんて思ってない。」
「本当に?」
「本当に。」
「……無理しないでいいんだよ?」
いつもなら「絶対消えてやらないからな」とか幽霊らしいこと言うのに、何故か今日は気が弱い。昨日仕事中に周りをうろちょろするなと少し怒ったからか、と少し反省する。
「…いや、どんな時に居なくなんのかなって」
しまった、言い方をミスった。それを聞いた瞬間♢♢さんの表情はまた一気に沈み眉を寄せて目を逸らし、俺を見ないように耐えていた。
「すみません、違います。」
「いや、住まわせて貰ってるの私だし、出てった方が――」
その先をどうしても聞きたくなかった、何故か気付けば俺は♢♢さんの手を取っていた。幽霊なのに、実体がないのに、なんて疑問は不思議と湧かず、ただただ小さな両手を少し強く握った。
「貴方に居なくなって欲しくないんです。」
俺の声だけが響いて、壁に反響もせずただただ♢♢さんに届いただけだった。♢♢さんは目を見開いていた、予想外だったのだろう、俺がこんなことを言うから。
「…そういう、キャラだっけ」
「メタいですよ、まぁ本当に思ってるんでそこは理解しといて下さいよ。」
「まぁ、分かったよ。」
「ていうか、触れたんですけど」
「そうだよね、本当にビックリした。」
「なんで触れるんですかこれ、今は触れてませんけど」
「いや私に聞かれても、」
「でも体温とかは感じなかったし、こりゃ科学的に解明出来ないわけだ。」
その夜俺は♢♢さんを悲しませた謝罪に軽くクレープを作った。♢♢さんは頬にクリームを付けながら美味しそうに頬張る、頬のクリームを親指で拭ってやると照れくさそうに笑って、21時には床についた。健康体の幽霊らしい。
―――――――――――――
…最近、啓悟くんが冷たい。啓悟くんと同居して5ヶ月経った、マンネリというやつか?いや、それはない。啓悟くんは毎日マンネリしている。理由を知りたくて啓悟くんの職場について行こうとするも、「着いて来ないでください。」とピシャリと言われ結局大人しく家で待つことになる。何かしただろうか?と考えるが、毎日なにかやらかしているので答えは見付からない。しかも3日前からあまり家に帰ってこなくなった、私のご飯を作って、公安に勧められた別の家に泊まってるようだ。ここでいいのに、なんて寂しく思う。
「ただいま。」
「おかえり!!」
ご飯を作りに帰ってきたらしい、すぐに玄関に行き啓悟くんを見上げた。
「すぐ作るんで待っててください」
「作ったらまたすぐどっか行くの?」
「最近忙しいんすよ、すみませんね。」
「忙しいのは毎日でしょ、ねぇ、今日はここで寝てってよ」
「いやまだやることあるんで、悪いですけど。」
「何で忙しいの?」
「書類とかパトロールとか。」
「まぁオールマイト引退したもんね〜」
「あ、テレビで見ました?そうなんすよ、だからいきなり忙しくなっちゃって。」
「そっか、なのに解放戦線の説明会?みたいなやつに行くの?」
「………は?」
こんなこと言うつもりは無かった、無かったけど、どうしても気になった。
「…つけてたんですか」
「うん、最近家にもあんま帰ってこなくなったし」
「はぁ、それでも着いてくるなって言ったでしょ。」
「仕方ないじゃん啓悟くんの事心配で、」
「俺は望んでないんですよ、その心配。」
その通りだった、勝手なことをした。自分でも分かっていたけど、その啓悟くんの冷たい声に、顔に、何故か無性に腹が立った。
「そんな言い方ある?心配してんのに」
「だから、その心配いらないですって。大人しく出来ないかな」
「好きに外出していいって言ったの啓悟くんじゃん」
「5日前にこれから着けてくるなって言ったでしょ。都合のいい事だけ覚えてるんですね。」
「ちが」
「違くないでしょ。」
「……なんなの、もういいよ、出てく」
「口で勝てないからって逃げないで下さいよ、そういうとこがガキっぽいって言ってんすよ。」
「っうるさい、啓悟くんには分かんない!!世間に媚ばっか売ってる啓悟くんには!!!」
「は?適当な事喋んないでくださいよ。じゃあもういいですよ、出てって下さい。そのまま成仏でもなんでもしてしまえばいい。元々そういうものなんですから。」
「、っっもう、嫌い!!」
こんな言い方ない、頭にきた。私はヤケクソで啓悟くんの家から出て、頭に血が上ったまま行く宛てもない癖に路地裏等を彷徨う。きっと、もうあの家には帰らないのだから、次の住む場所を探さないと。
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次完結にする