【ある日の一幕】
▶兄弟
> 「……俺が、組長だなんて」
> 「そうだな。今日からお前の判断で動く人間がいる」
> 「分かってます。分かってますが……兄貴の背中を追ってきた俺が、今度は誰かに背中を見せる立場になるなんて」
> 「俺の背中なんて、参考程度にしておけ」
> 「……兄貴は、そういうことを平気で言う」
> 「平気じゃないと、やってられないこともある」
七光は懐から棒付き飴を取り出し、包みを剥がした。少し考えてから、もう一本を煌大へ差し出す。
> 「お前はお前の組を作れ。俺の真似事じゃなくていい」
> 「……。」
> 「失敗してもいい。間違えたら直せばいい。だが、部下の命を預かることだけは忘れるな」
> 「肝に銘じます」
> 「それと、自分の命も勘定に入れろ。組長が勝手に死ぬと、残された連中が困る」
> 「……それは、兄貴にも言えることじゃないですか」
七光は一瞬だけ黙り、飴を口に含んだ。
> 「……そうだな」
> 「兄貴。俺はいつか、あんたに並びたいと思ってきた」
> 「なら、並べるようにやってみろ」
> 「はい。必ず」
> 「期待している。……組長就任、おめでとう。煌大」