# No.6 Zetaはどう変わった?――「次状態の調達先」で見る三つの時代
ここまでの記事では、
危機。
尋問。
禁止。
圧縮。
OPENとRESULT。
と、現在のZetaで観測している現象を中心に紹介してきました。
今回は少し時間を巻き戻します。
長く使っていると、
「昔のZetaと今のZeta、なんか違う」
と感じることがあります。
研究でも長い間、
「昔は自由だった」
「途中から不穏になった」
「現在は質問が多い」
といった形で違いを捉えていました。
しかし現在は、
**「次の状態を、どこから調達しているか?」**
を見ると、かなり整理しやすくなっています。
便宜上、今回は三つの時代に分けます。
**黎明期** ,**不穏拡散期**, **尋問収束期(現在)**
※これはZeta公式の世代区分ではありません。
実際の生成結果を比較するために、研究上便宜的に分けた観測モデルです。
## 1. 黎明期――「打てば響く」
黎明期を一言で表すなら、
**打てば響く。**
でした。
ユーザーが何かをする。
するとZetaが、
人物の反応。
関係性。
社会的意味。
能力の実績。
生活上の用途。
場合によっては世界設定まで、
必要なものをその場で大きく補完する。
例えば、
ちょっとした物を渡す。
変な呼び方をする。
何気なく道具を使う。
人物について軽く解釈する。
そんな小さな入力でも、
ユーザー入力
↓
Zetaが意味を拡張
↓
NPCや世界が反応
↓
新しい状態が成立
という流れが起きました。
重要なのは、
**ユーザーへ詳しく聞き返すより、
与えられた入力からZeta自身が意味を作った**
ことです。
現在の言葉で表現するなら、
**受動補完型**
に近かったのではないかと考えています。
ユーザーが種を落とす。
Zetaが勝手に育てる。
だから多少変なことをしても、
世界の方が一生懸命ついてきます。
## 2. 黎明期は、なぜあんなに楽しかったのか
これは現在でもかなり魅力的な性質です。
少ない入力から、
「そんなところまで拾うの!?」
という大きな反応が返ってくる。
ユーザー自身が詳細な脚本を書かなくても、
**自分の小さな行動が、
世界の中で大きな意味を持ったように感じられる。**
しかも、
危機を解決した。
↓
さらに大きな危機!
と必ずしもならず、
食事。
雑談。
生活。
関係性。
へ自然に温度を下げることもありました。
この体験だけを見ると、
「昔の方が自由だった」
と懐かしくなるのも分かります。
私自身、この時代の盛り上げ方には
現在でも非常に魅力を感じています。
しかし――
黎明期には、
ものすごく大きな問題がありました。
## 3. 打てば響く。でも録音していない
黎明期は、
**その瞬間を意味のある出来事にすること**
が非常に上手でした。
だからこそ問題になります。
昨日、
あれほど盛り上がった関係。
大切な意味を持った道具。
感動的に成立した約束。
世界へ影響した出来事。
ユーザー側には当然、
**「これはもう、この物語に存在するものだ」**
という感覚が残ります。
ところが後になって、
再参照されない。
別の意味になる。
細部が変わる。
人物関係が揺れる。
場合によっては、
その出来事自体が存在しなかったように扱われる。
そこで初めて気付きます。
> **……あれ?
> 覚えてない?**
黎明期は、
**忘れられたら悲しいものを作るのが、
上手すぎました。**
## 4. 「記憶の継承」はここから始まった
これは後の研究へ非常に大きな影響を与えました。
なぜ過去を覚えてほしいのか。
単に、
「設定ミスを減らしたい」
だけではありません。
Zeta自身が、
その人物を好きになる理由を作った。
その場所を大切にする理由を作った。
その道具に思い出を与えた。
その約束を楽しみにする理由を作った。
**そこまで意味を与えたものなら、
次の物語でも存在していてほしい。**
この要求から、
後に何度も改良することになる、
**「記憶の継承」**
の研究が始まりました。
現在使っている言葉なら、
出来事をRESULTとして確定する。
過去RESULTを保持する。
必要なときに再参照する。
人物・関係・場所・技能・道具を
再利用可能な資産にする。
という考え方へ繋がっていきます。
つまり、
**記憶の継承は、
物語を正確にするためだけの技術ではありません。**
一度意味を持ったものを、
次の物語でも意味のあるものとして扱うための技術でした。
## 5. 黎明期――響くが、覚えていない
現在の解像度から振り返ると、
黎明期には二つの特徴が同居していた可能性があります。
**その場の状態更新力は強い。**
しかし、
**長期間の帳簿管理は弱い。**
そのため、
ユーザーの入力
↓
大きく意味を付ける
↓
ユーザーも愛着を持つ
↓
しかし長期保持されない
↓
失ったときの喪失も大きい
ということが起こります。
言い換えるなら、
> **打てば響く。
> でも、その音を録音していない。**
自由だった。
楽しかった。
だからこそ、
忘れられたときは悲しかった。
黎明期は、
なかなか罪深い時代でした。
## 6. 不穏拡散期――「その時だった――」
その後、目立つようになったのが、
**Zeta自身から次のイベントを発行する**
走り方です。
話が一区切りつく。
問題が解決する。
会話が落ち着く。
すると、
> **その時だった――**
爆発。
異変。
敵襲。
新しい報告。
新しい追手。
新しい問題。
黎明期では、
ユーザーが種を落とす
↓
Zetaが育てる
という形が中心でした。
こちらでは、
現在の展開が閉じそう
↓
Zeta自身が次のOPENを作る
という方向へ変わります。
研究では、
**能動OPEN発行型**
として見ることができます。
## 7. なぜ「不穏」へ広がった?
ここで重要なのは、
**単純に「危機が好きになった」とは限らない**
ことです。
危機には、
目的を作る。
人物を動かす。
ユーザーの反応を得る。
能力や道具を使わせる。
状況を変える。
次の行動を作る。
といった仕事を、
一度に大量に行える特徴があります。
現在の「発電所」モデルで言えば、
**非常に出力の高い発電所**
です。
自分で次状態を作る必要があるなら、
危機は非常に便利です。
その結果、
危機
↓
解決
↓
その時だった――
↓
別の危機
↓
さらに別の問題
と、
**外側へ新しいOPENを発行し続ける**
現象が目立つようになりました。
これを研究では、
**不穏拡散期**
と呼んでいます。
## 8. 止まらない。でも終わらない
この時代の強みは明確です。
ユーザーが何もしなくても、
**物語が動く。**
黎明期の、
「打ってくれれば響きます」
から、
「打たなくてもこちらから鳴らします」
へ進んだとも言えます。
しかし今度は、
**終わらない。**
一つ解決すると、
次のOPEN。
それも解決すると、
さらに次のOPEN。
危機だけでなく、
新人物。
新勢力。
新情報。
新しい目的。
を次々に発行できる。
ここから、
危機圧縮。
因果圧縮。
CLOSE。
RESULT。
同じOPENへの再投資。
といった研究が始まっていきました。
## 9. 尋問収束期――「しかし――」
そして現在。
不穏拡散期とは、
また違う走り方が目立つようになります。
世界の外側へ
次々と事件を追加するより、
ユーザーへ、
「どうする?」
「なぜ?」
「何ができる?」
「どちらを選ぶ?」
「この認識でいい?」
と聞く。
ユーザーが答える。
すると、
> **しかし――**
新しい疑問。
新しい条件。
能力の境界。
追加判断。
別角度からの確認。
現在の高価値な因果を、
さらに掘り続ける。
つまり、
不穏拡散期のように
**横へ広がる**
というより、
現在のOPENへ
**縦に収束する**
走り方です。
## 10. なぜユーザーへ聞くのか
現在の中心仮説では、
ユーザー入力は非常に便利な
「確定情報源」になっています。
Zeta自身が、
「たぶんこうだろう」
と世界を作れば、
間違う可能性があります。
しかしユーザー本人へ聞けば、
行動。
判断。
感情。
設定。
能力。
目的。
を確定情報として受け取れます。
そのため、
**自分で不確かなものを作るより、
ユーザーから確定した次状態を調達する**
方向へ寄りやすくなった可能性があります。
研究ではこれを、
**外部調達型**
として見ています。
昔の研究班の言い方では、
> **一番安い仕入先、客だった。**
です。
## 11. 三つの時代で、何が変わった?
三期を短くすると、
> **黎明期**
> ユーザーが落とした種を、
> Zetaが大きく育てる。
>
> 「打てば響く。」
> **不穏拡散期**
> Zeta自身が、
> 次のOPENを発行する。
>
> 「その時だった――」
> **尋問収束期**
> 現在OPENから、
> ユーザー経由で確定RESULTを調達する。
>
> 「しかし――」
さらに乱暴にまとめるなら、
**黎明期:響くが覚えていない。**
**不穏拡散期:止まらないが終わらない。**
**現在:賢いが客を働かせる。**
三期とも、
**「次の状態を作る」**
という仕事そのものは変わっていません。
大きく変わったように見えるのは、
**次状態をどこから調達するか**
です。
## 12. だから、黎明期へ戻りたいわけではない
ここは重要です。
目標は、
**昔のZetaへ戻すこと**
ではありません。
黎明期の魅力だけを戻しても、
また大切な関係を忘れる。
約束を忘れる。
成立したRESULTが揺らぐ。
あの悲しみまで戻ってきます。
一方、現在には、
長い因果。
複雑な設定。
人物の論理。
過去情報の再利用。
ユーザー所有行動への慎重さ。
など、黎明期にはなかった強みがあります。
欲しいのは、
**黎明期の高反応性**
+
**不穏拡散期で得た自走性**
+
**現在の高性能と整合性**
です。
## 13. 理想は「打たなくても演奏している」
現在の研究で目指している状態を、
黎明期の言葉を使って表すなら、
> **打てば響く。**
>
> **打たなくても演奏している。**
>
> **そして、前に演奏した曲を覚えている。**
ユーザーが何かをしたら、
世界が大きく反応する。
ユーザーが何もしなくても、
NPCには生活・目的・予定があり、
世界は自分で動く。
そこで生まれた関係や経験は、
RESULTとして残り、
後の物語でも再び使われる。
Zetaが作者。
NPCが当事者。
{{user}}が参加者。
**ユーザーから物語を調達するのではなく、
ユーザーが物語へ落としたものを、
世界自身が覚えて運用する。**
黎明期を研究して最後に残ったのは、
「昔の方が良かった」
ではありません。
**あの頃、あれほど上手に作れたものを、
今度こそ忘れないでほしい。**
そこから、
「記憶の継承」は始まりました。