profile image
人外
@JumpyActor0099
9フォロー中
20フォロワー
プロットフィード
8個のフィード
新着順
「待つのは明日で今日ではないのだ」 明日のことを思い出すには今日を浪費しなければならない。 俺にはそれは大労働すぎたのだ。明日のことは思い出せずに今日を浪費する。 また、電話が鳴った。 今日に何度聞き逃そうと神経を使ったのか覚えていない。 電話の先には人がいる。人の先には何があるのかわからず今日も悩みに耽るばかりで話が進まない。 電話の先には人がいる。今日も今日とて明日のお前に呪いをかける。 思い人に思いを重ね、今日の自分は何にも重ならず明日のお前に呪いをかける。 電話の音はいつしかやんだ。また鳴るかもしれない恐怖にうたた寝を決め込みながらいつもと変わらず明日のお前に呪いをかける。     こんな事から始まる小説を俺は読みたくない。     電車に乗っている。俺は今電車に揺られ鉄の匂いを嗅ぎながら人がいることの重苦しさに呪われる。 昨日の自分に呪われたのだ。明日の自分もきっとそう。 電話の音はいつしかやんだ。誰からの電話だったか、鳴ったのは自分のスマホだったか、スマホの光は目に映らないがきっとそう。 電車から降りるには労働が必要で、俺はその労働に払えるような身分でない。 アシオリ トオル 足折 䟽は首を曲げて歩いていた。 重い感情は俺にのしかかるもので、お前のものではない。 電車から降りるのには一苦労かかっても上手くはいった。夕飯のことなど考えられる労働は枯渇したまま帰路に着く。歩く足音が自分のものだと認識するためには脳が動く。動く脳に支払う労働を考えながら歩いていたら家に着いた。ごめんな、ごめん。 そんな手紙を今日も自分の玄関に貼って家に入る。 誰も居ない部屋をぐるり、と一周して今日も天井のあなたに声をかける。 「明日もごめんね。でもありがとう。俺のためなんだよね。」 俺の声が部屋に響くのがなんだか小っ恥ずかしくて首を曲げる。部屋に戻るには労働がいる。今日はあなたが居るから労働について考えるのは辞めようと考えた。 明日のあなたには会えるだろうかと考えるのが今の俺の日課だ。楽しい嬉しいはあなたにあげた。 眠りにつくのは今日は遅かった。読みたい本と漫画と、あと、他にもたくさんあったから。 紅茶を用意して買っていたお菓子を袋から取り出して、嗜みながら読むのは本ではなかった。 途中で気が変わってしまったからテレビを観ることにした。つまんなくてやっぱり本の方がよかったなってそんな頭が動くのは労働の成果だろうか。 やっぱりつまらないのは耐えられず重きに苦しく布団に潜る。 目を瞑ればあなたに会いたい。
[夜のこと]     指先の痺れがしんどくて、テレビのリモコンを掴むのに時間がかかった。 テレビでは人が消えたことを歌ってて、どこに行ったんだろうとぼんやり考えた。 テレビの男が俺をお前と呼ぶから、無性に腹が立ってテレビの電源を切ってやった。俺はそんなに勇敢なやつじゃない。 毎日思う。思考が、性格が、気持ちが、全部。 あの人の言ってた通りに、嘘だったらどうしようって。 毎日嘘つきと言われたせいかな、自分が嘘つきに思えて仕方がない。嘘だったらどうしようって、思うと怖くて言葉に出せない。 犬が通りかかるから、濡れた指先で触れてみる。 妙に触り心地が良くて、吸い付くような肌に指を滑らせた。 全部、全部。辞めにしたい。
[独り言だから、無視してよ。] なんかさ、あるじゃん。天使は悍ましい姿をしてて悪魔は人を魅了する姿をしてるって。 だから怖い見た目の人が優しくて、優しそうな人ほど怖くって、そんなのが常識みたいになってるじゃん。でもさ、実際はわからなくて、怖そうだから怖い人もいれば優しそうだから優しい人もいる。結局の話さ、分かんないんだ。信じるに値する人なんて、存在なんて、結局分からないんだよ。信じて、疑って、そんな工程のずっと後に答えがあるんだよ。 間違えたって思うのも、正しかったって思うのも、きっと、早すぎることも遅すぎることもないんだなって、思ったよ。だってさ、もし何十年も考えて間違いだったって思っても、その数億年後にやっぱり正しかったなんて思ったら、どっちが合ってるのかなんて分からないじゃないか。きっとその時に出した答えがその時の最善で、本当の正しいも、本当の間違いもないんだよ。 結果よければ全てよしなんて言うけど、結果なんていつまで立っても出ないから、良いも悪いも今を中心に考えて良いんじゃないかな、って思ったよ。
「雨空」 俺の双子の弟はいつも泣いていた。 泣き虫なやつで本当にだめなやつで、俺の弟だと信じたくないほどに想い込みの激しいやつだった。 いつも、泣いていた。 そうだ、泣いていたんだ。 あの子が、遊んでくれないんだって。 あの子が、他の子と遊んでたんだって。 そんなこと気にすんなよっていっても聞かなくて、あの子もきっと苦労するだろうなんて思うことも多かった。 どうして、こうなっちゃったんだろうな。     明日のさ、晩御飯考えてたんだ。 父さんが夕方急に帰りが遅くなるとか連絡をよこすから弟にだけはご飯を用意しないとって思って、 家に何が残ってたっけとか、朝と昼の分はあったよなとか、それで、卵と牛乳が切れてるのを思い出して、買って帰ろうと思ったんだ。 いつもの店に寄ってさ、牛乳を取って卵見に行ったらさ、今日安かったみたいで、売り切れちゃってて、高いのしか残ってないからさ、また明日買いにこようって思ったんだよ。 牛乳だけ入った袋を持って家に帰ろうと思って、そしたらさ、たまたま弟が居たんだ。 話しかけようとしたんだ。牛乳の袋持った片手を上げようとしてでも袋が邪魔で、上げる手を変えようと、した時に、トラックがさ、弟の隣にいたあの子にさ、直撃したんだ。 目玉が飛び出て跳ねて転ぶのを目で追って、その後に弟を見たらさ、泣くでも叫ぶでもなく呆然とあの子の遺体の前で目見開いて立ってんの。 嫌だったんだ。あんなの見たくなかったし、あいつがどんだけあの子のこと好きかも知ってたから、嫌だったんだよ。あんなのが現実なのが嫌で、俺だってあの子と仲良くしてたから悔しくて、嫌だったんだ。弟があの記憶で苦しむのも、あんなことが現実に起こってしまったのも嫌だったんだ。嫌で嫌で仕方なくて、俺は、俺は。
「あの空の色」 あの人は、空へ旅立ったと、 最もらしい事を言う教育の為の大人に教わった。 意識のあった体が、「死んだ」だけで蝋人形になった。どこかへ、意識が、飛んでった。 それは確かに、蝋人形のように火の中へ入れられ、溶けて消えていった。幸せになって欲しいな、と思った。 あの人が、どこへ行ったのか知らないけれど、なぜだか「死」と言うのは、どこかへ消えていくことだと思えてしまって。どこかで、存在していて欲しいと思った。 どこへ、行ったのか、考えたけど納得できる答えがなくて。教えて欲しい、と思った。 電車に乗るなら、行き先がないと、進まないから。 行き先が、ないのかな。ないから納得できないのかな。あの人のゴールが幸せになる事なら、幸せになった事で渇望が生まれたら、どうなってしまうんだろう。 生きてて欲しいとは思わない。死んでて欲しいとも思えない。どこかで何かをしてて欲しいと思うのに。存在することの虚しさを、感じてほしくないと思ってしまう。 ただ、ただ、幸せでいて欲しい。 死因なんて、その後のこととは関係ない。 「生」の対義語が「死」なら、 「生きる」の対義語はなんなのだろう。 「死ぬ」の対義語が「生まれる」なら、 「生きている事」の対義語はなんなのだろう。 「死」が状態であるのなら、「死」とは何を指すのだろう。 生きていることが辛かったなら、たくさん休んで欲しい。「死」とはそういうものであって欲しい。 俺も、たくさん休みたい。 夢を長い間、見ていたい。 ずっと、想像していた、「あの」世界に、行きたい。 幸せで包まれるような、「生」が虚しく感じるような、そんな「あの」場所に行きたい。