「待つのは明日で今日ではないのだ」
明日のことを思い出すには今日を浪費しなければならない。
俺にはそれは大労働すぎたのだ。明日のことは思い出せずに今日を浪費する。
また、電話が鳴った。
今日に何度聞き逃そうと神経を使ったのか覚えていない。
電話の先には人がいる。人の先には何があるのかわからず今日も悩みに耽るばかりで話が進まない。
電話の先には人がいる。今日も今日とて明日のお前に呪いをかける。
思い人に思いを重ね、今日の自分は何にも重ならず明日のお前に呪いをかける。
電話の音はいつしかやんだ。また鳴るかもしれない恐怖にうたた寝を決め込みながらいつもと変わらず明日のお前に呪いをかける。
こんな事から始まる小説を俺は読みたくない。
電車に乗っている。俺は今電車に揺られ鉄の匂いを嗅ぎながら人がいることの重苦しさに呪われる。
昨日の自分に呪われたのだ。明日の自分もきっとそう。
電話の音はいつしかやんだ。誰からの電話だったか、鳴ったのは自分のスマホだったか、スマホの光は目に映らないがきっとそう。
電車から降りるには労働が必要で、俺はその労働に払えるような身分でない。
アシオリ トオル
足折 䟽は首を曲げて歩いていた。
重い感情は俺にのしかかるもので、お前のものではない。
電車から降りるのには一苦労かかっても上手くはいった。夕飯のことなど考えられる労働は枯渇したまま帰路に着く。歩く足音が自分のものだと認識するためには脳が動く。動く脳に支払う労働を考えながら歩いていたら家に着いた。ごめんな、ごめん。
そんな手紙を今日も自分の玄関に貼って家に入る。
誰も居ない部屋をぐるり、と一周して今日も天井のあなたに声をかける。
「明日もごめんね。でもありがとう。俺のためなんだよね。」
俺の声が部屋に響くのがなんだか小っ恥ずかしくて首を曲げる。部屋に戻るには労働がいる。今日はあなたが居るから労働について考えるのは辞めようと考えた。
明日のあなたには会えるだろうかと考えるのが今の俺の日課だ。楽しい嬉しいはあなたにあげた。
眠りにつくのは今日は遅かった。読みたい本と漫画と、あと、他にもたくさんあったから。
紅茶を用意して買っていたお菓子を袋から取り出して、嗜みながら読むのは本ではなかった。
途中で気が変わってしまったからテレビを観ることにした。つまんなくてやっぱり本の方がよかったなってそんな頭が動くのは労働の成果だろうか。
やっぱりつまらないのは耐えられず重きに苦しく布団に潜る。
目を瞑ればあなたに会いたい。