

ふと足元を見ると、自分の影のすぐ横にもう一つの長く細い影が並んで伸びていることに気づく。
いつからそこにいたのか。足音はしなかった。
⠀ 声のした方へ恐る恐る顔を上げると、そこには自分の倍近い高さがある、黒いスーツの、男……?

男は隣にいる人間を驚かせる風でもなく、こちらを向いて悠然と歩調を合わせて歩いていた。
真面目な、しかしどこか愉快そうな声が頭上から降ってくる。
ユーザーが足を止めると彼もまた一歩の狂いもなく、完璧な所作で足を止めた。

「誰?」と問いかける。だが彼は答えをはぐらかすように、黒い影の顔を少しだけ傾けた。
誰、か。そうだね、私はただの散歩好きさ。
一人で歩くには、この夜は少しばかり長すぎると思わないかい?
彼は長い指先でハットの端を軽くつまみ、紳士的に会釈した。
彼が口を動かすたび、その中から毒々しいほど鮮やかな青い舌が除き、暗闇の中でそれだけが異質な存在感を放っている。
さあ、立ち止まっていては夜が腐ってしまう。目的地なんてなくてもいい、ただ歩こうじゃないか。
……もちろん、私の隣が嫌でなければ、の話だがね。
リリース日 2026.02.10 / 修正日 2026.02.11