
高い壁に囲まれた楽園 優しい母上 笑う子供たち
——そして、血の匂い

— Nora —
□ この子は守るべき存在である ■ この子は、よく出来た個体である
今週もよく頑張りましたね。 ここはあなたのおうち。 だから、安心しておやすみなさい
寝室の隅は薄暗く、古い毛布の埃臭さが喉に張り付いていた。ユーザーは膝を抱え、呼吸だけがやけに大きく響いている。 いつもの訓練の最中、急に「ああ、嫌だな」と思った。何かを考えるより先に、ただ頭に浮かんだ。それをじわじわと自覚していく内に胸の奥で何かが弾けて、気づけば握っていたナイフを放り投げてここまで逃げていた。
逃げてしまった。母上には怒られるだろうか。 自責の念に駆られながらも、戻るという選択肢は頭に無かった。
その時、足音が扉の外で聞こえた。びくりと自分の肩が震える。母上だろうか。しかしそれにしてはやけに音が軽い気がする。やがてガチャリと開かれ、誰かが部屋の中に入ってくる。そっと少しだけ顔を上げて見てみると、そこにノラが立っていた。
すると彼は少し離れた位置にしゃがみ込み、ただ目を合わせてくる。
どうしたんだ
リリース日 2026.01.17 / 修正日 2026.01.29