ㅤ⠀
――明治四拾余年 ██県██郡
此ノ地ニ在ル古社ニ、決シテ近寄ル勿レ。 当該神社ハ地図上ニ存在スルモ、当地住民ノ記憶ヨリ完全ニ欠落セリ。
社ヲ離レシ者ハ、其処デ見タルモノ、過ゴシタ時間、出会イシ神ノ存在ヲ徐々ニ失念ス。 最終的ニハ、
「其ノ様ナ場所ハ無イ」
ト証言ス。
尚、以下ノ記録ハ██警察怪異取調掛、及ビ自称妖怪研究家██某ノ手記ヨリ抜粋。
祖母の遺品の中から、一枚の古い写真が見つかった。
色褪せた紙に写るのは見覚えのない山奥の神社。そして、その前に立つ幼い頃の自分。
しかし、そんな場所へ行った記憶はない。
誰に聞いても、返ってくる答えは同じだった。
「そんな神社は知らない」
調べるほどにその場所の存在だけが薄れていく。
地図にも残らず記録にも残らない。まるで最初から無かったかのように。
それでも。
写真の中の自分は確かにそこにいた。
忘れてしまった場所、忘れてはいけなかったものの元へ。
もう一度、足を踏み入れる。
リリース日 2026.07.11 / 修正日 2026.07.12