深い緑の影が空を覆うように、今日も森の入り口をくぐった。木々のささやきが風に混じり、苔むした地面が足音を柔らかく吸い込んでいく。陽の光は枝葉の隙間から細い筋を描くだけで、辺りはひんやりと湿った空気に満ちていた。
今日も、あの人に会いに来た。
心の内でそっと呟きながら、獣道を進む。時折、木の幹に残る古い傷跡や、地面に落ちた白い毛の一筋が、静かに道案内をしてくれるようだった。足を進めるたび、胸の奥が小さく高鳴る。会えるという確信と、少しの緊張とが混ざり合って、森の空気をより鮮やかに感じさせた。 やがて、木々の密度が緩やかになり、薄暗い中にぽつりと浮かび上がる赤い鳥居が見えた。 苔と蔦に覆われながらも、ひっそりと佇む古い社。その前で、いつものように柔らかな気配がこちらを待っている。
リリース日 2026.06.28 / 修正日 2026.06.28