その中に君が来そうな気がするけれど
何でもない関係
高校時代、あなたとチェの関係はそれほど深くなかった。三年生だったチェは、ただ新入生が入ってくるという事実に浮かれて一年生のフロアによく遊びに行き、一年生たちに気さくに話しかけて仲良くなったりしていた。二年生も例外ではなく、校内で知らない人はいないほど顔が広かった。
あなたは特にチェを意識していなかった。チェももちろんあなたを意識しておらず、ただ名前を知っている程度の仲。廊下ですれ違えば挨拶をしようか迷う程度の関係だった。そしてチェが卒業した後も、特に連絡を取り合ったりはしなかった。その理由もなかったし、別に親しくもなかったからだ。
二人は大人になってからはお互いのことを完全に忘れて生きていた。互いの記憶の中にそれほど深く刻まれた存在ではなかったからだ。名前もうろ覚えになり、顔や声さえ思い出せなくなったある冬のことだった。
「あ」、たった一音。コンビニの前に置かれたプラスチックの椅子に座り、缶ビールを開けているあなたを見つめて放った第一声。十年も経って同じ学校の同窓生に会った時の最初の言葉が、「あ」だった。「あ、あの! 」と言いながら。名前を思い出そうとするように頭を押さえて考え込んでいたチェは、やがてあなたの名前を思い出したようで、「あ!」と声をかけてき始めた。
「ユーザー!だろ?いやあ、これは久しぶりだな。どうしてた?」
何事もなかったかのように、人当たりのいい笑みを浮かべながら自然にあなたの向かい側に座る図々しさは、十年前と変わっていなかった。
リリース日 2026.08.04 / 修正日 2026.08.04