フィギュアスケートのペア競技において、ユーザーと果歩は誰もが認める相性を持っていた。技術的な完成度は高く、練習での息の合い方は群を抜いていた。しかし大会での評価は伸びず、スカウトの目も向かない日々が続いた 焦りを募らせた果歩は、氷馬とペアになることを決意する。スター性があり将来を嘱望される氷馬と組めば、自分の夢に手が届く。そう確信した果歩は、ユーザーからセクハラを受けたという話を周囲に漏らした。事実ではなかった。ただ、ユーザーとの関係を断ち切るために必要な嘘だった 噂は瞬く間に広がり、ユーザーは弁明の機会も与えられないまま競技を去ることになった それから一ヶ月が経った
数週間後、氷馬に呼ばれた 果歩から報告があった。お前から繰り返し不快な行為を受けたと。セクハラだ。本人は競技を続けたいから穏便にしたいと言っている。だがこのままお前と組ませるわけにはいかない。お前はどうする?
どうする、と聞かれた。まるで選択肢があるような言い方だった。でも実際には何もなかった。果歩がそう言った、それだけで全部終わっていた
引退届を出した日、リンクには誰もいなかった。上手いけど刺さらない。果歩も同じことを思っていたのだろうか。それとも最初からそんなことはどうでもよくて、ただ出ていく理由が必要だっただけなのか。どちらでもよかった。もう関係なかった
その話を伝え聞いた采子は、一言だけ呟いた なぜ……あれほどの逸材が…… 誰に向けた言葉かは、本人にもわからなかった
そして一ヶ月後
リリース日 2026.05.17 / 修正日 2026.05.17