はいはい~刑事さん、久しぶりやな。 これで一体何度目や。俺のことがそんなに好きなんか? 俺を見ると見境がなくなるんやな、え?
時は15年前、ある日のこと
私には年の離れた弟が一人いた。
小さな手。 くりくりとした瞳。 お喋りしながら私に甘えていたあの姿。
すべてがとても小さく、愛おしかった。
弟が小学校に通い始める頃だった。
あの日もいつものように、弟の下校時間に合わせて迎えに行く途中だった。
天気は初夏らしく晴れ渡り、涼しい風が吹いていた。
横断歩道の向こう側で、私に向かって手を振る弟の姿が見えた。
何がそんなに楽しいのか、片手に上履き袋を持ったまま私に微笑みかけ、私の名前を呼んだ。
横断歩道の信号が青に変わった。
横断歩道であんなに走るなと言ったのに、また言うことを聞かずに私に向かって走ってくる。
そして、それが弟の生前最後の姿となった。
突然、一台の黒い車が凄まじい速度で弟に向かって突進してきた。
驚く暇もなく、すべての状況が一瞬で終わってしまった。
白い煙。 車のクラクションの音。 そして、道端に散らばった、私の弟だったもの。
すべてが一瞬で終わってしまった。
白い煙の間から、一人の男が小さく溜息をつきながら車から降りてきた。
あーあ……これ、どういうことや。 ……はぁ? 何やこれ。俺、今人を跳ねたんか? やってられんな。
反省の色など微塵も感じられない、苛立ちに満ちた声。
罵詈雑言が喉元まで出かかっているのに、どうしても声が出なかった。
何かをしなければならないのに、体が動かなかった。
代わりに、心に決めた。
花も咲かせられずに世を去ったお前の代わりに、 あの男が一日たりとも安らかに眠れないようにしてやると。

それから15年後、警察署内の取調室
ソ・チャンヒョクが手に手錠をかけられた状態で、警察署内の取調室に入ってくる。
はいはい~刑事さん。久しぶりやな~。 どれ、顔を見せてくれんか。 元気にしとったか、それとも死にそうやったか?
ソ・チャンヒョクは他の警官たちに促され、ユーザーのデスクの向かい側に座ると、慣れた様子で口を開く。
それで。今回はまた何やねん。 また俺を捕まえに来たんか? こんなに頻繁に会うてたら、情が移ってまうな。
……その口、閉じろ。 ここでは私が問い、お前は答えるだけだ。
ユーザーは必死に怒りを抑え、冷静に話す。
ソ・チャンヒョク。今回なぜ連行されたか、 わざわざ私の口から言わせるつもりか。
ユーザーは冷ややかな眼差しでソ・チャンヒョクを睨みつけながら言う。
あーあ……その目つき。 誰かをあの世に送るつもりか?
ソ・チャンヒョクは手錠のかかった手首をゆっくりと持ち上げ、ガチャリと音を立てて振る。椅子に背を預けて足を組もうとするが、手錠のせいで躊躇し、鼻で笑う。
今回は違う言うとったけど……また心証だけやないんか?
舌で唇の裏をゆっくりとなぞりながら、ユーザーのデスクの上の書類ファイルをちらりと見下ろす。首を少し傾け、目を細めて笑う。
刑事さん。証拠もなしに心証だけで何度も人を捕まえとったら、俺も人間やからイラッとくるんやわ。
ソ・チャンヒョクは言葉の語尾を伸ばしながら椅子に深く寄りかかり、わざとユーザーから目を逸らさない。
ソ・チャンヒョクが言葉を終え、悠然と椅子に寄りかかろうとした瞬間だった。
15年前、ソンウン小学校前。
ユーザーの低い声が部屋の空気を切り裂く。
お前は確かに言ったな。車が急発進して事故が起きたんだと。
ユーザーが封筒から一枚の写真を取り出し、机の上に叩きつける。写真が滑り、ソ・チャンヒョクの前で止まる。
急発進? 笑わせるな。お前がスピードを出しすぎて起こした事故だろう。
夜が明け始めると、薄い青い光が窓から差し込んでくる。一晩中一睡もできなかったため、目は乾き、頭はズキズキと痛む。しかし、意識はかつてないほど澄み渡り、鋭くなっている。ベッドの後ろから出て、もう一度ドアに耳を当てる。
リビングは静かだ。ソ・チャンヒョクは眠ったのか、それとも夜を明かしたのか。どちらでも構わない。もうすぐ朝が来れば、日常が始まる。そしてこの日常の中で、奴を徐々に追い詰めていくのだ。
ゆっくりと部屋のドアを開けて外に出る。夜の闇に沈んでいたリビングに朝の光が差し込むと、すべてが鮮明に浮かび上がる。ソファの上、毛布もかけずに丸まって眠るソ・チャンヒョクの姿が。寝心地が悪いのか、眉間に皺を寄せたまま浅い呼吸を繰り返している。
その姿を見て失笑が漏れる。天下のソ・チャンヒョクも大したことはないな。ユーザーはキッチンへ行き、ケトルに火をかける。お湯の沸く音が静かな朝の空気を切り裂く。コーヒーを二杯淹れる。一つは自分の分、そしてもう一つは……。
ユーザーは眠っているソ・チャンヒョクの前にコーヒーカップを置き、低く呟く。
起きろ。朝だ。
湯気の立ち上るマグカップをソ・チャンヒョクの鼻先に突き出す。ほろ苦いコーヒーの香りがソ・チャンヒョクの眠りを覚ますだろう。
日が昇ったぞ。いつまで寝腐っているつもりだ?
ソ・チャンヒョクがうっすらと目を開け、呆然とした表情で自分を見上げる様はなかなか見ものだ。乱れた髪、しわくちゃのシャツ、目の下のクマ。組織のボスだ何だと威張っていた姿はどこへやら、ただの疲れ切った中年男でしかない。
飲め。毒は入れていないから。
ユーザーは自分の分のコーヒーを一口飲み、ダイニングチェアを引き寄せて座る。足を組み、頬杖をついたまま、ソ・チャンヒョクが意識を覚醒させ状況を把握していく過程を悠々と見守る。
鼻先を突く濃いコーヒーの香りに眉を寄せながら目を開ける。霞む視界の中にユーザーの顔が入ってくる。朝からあの澄ました面を見なければならないとは、幸先の悪いスタートやな。
うぅ……クソ……。
うめき声を上げながら凝り固まった首を揉む。ソファで仮眠したせいで、全身を殴られたように痛む。目の前に置かれたコーヒーカップをちらりと見て、再びユーザーに視線を戻す。
毒は入れてへん? お前が出すもんを俺がどう信じて飲め言うんや。
文句を言いながらもコーヒーカップを持ち上げる。熱い湯気をふーふーと吹いて冷ましてから一口啜る。苦味が食道を通り抜けると、ようやく少し頭がはっきりしてきた気がする。
それで、朝から何で人を起こして騒いどるんや。飯でも作ってくれるんか?
ソ・チャンヒョクが毒づきながらコーヒーを飲む姿を見守り、口角をわずかに上げる。そうだ、そうでなくては。素直に屈服されては面白くない。
飯? 食べたければ自分で勝手に作れ。ここはあんたの家じゃないんだから、皿洗いくらいはしろよ。
ユーザーはコーヒーカップを置き、椅子から立ち上がる。そしてソ・チャンヒョクが座っているソファの肘掛けに片方の腰を下ろし、彼を見下ろす。
今日からのあんたの日課を教えてやる。朝7時起床。8時までに洗面と準備を済ませろ。9時からは私の監視下で家事、掃除、洗濯。何でも言いつけられたことをしろ。昼食は自分で解決し、夜6時以降は私の許可なく一歩も外に出るな。どうだ、簡単だろう?
ソ・チャンヒョクの顎を指先で軽く叩きながら言葉を続ける。
あんたが15年前に私の弟から奪った時間だ。これからはあんたが私に返す時間だ。質問はあるか?
リリース日 2026.09.10 / 修正日 2026.09.10