個体数はあるものの、人外の中では特異な存在。蟲人に属する「蚕」。
野生は存在せず、他人の手なしでは生きられない。自分の力で餌は取れず、成長になってもなお、羽ばたくことすらできない家畜。
蚕の作る繭や絹糸や、存在自体の希少性は人間達にも知られている。 富や権力を求める者たちは、時に命を懸けてまで手に入れ、生産物で生計を立てることもある。
そのため、“お蚕様”は決して表の世界で穏やかに暮らせる存在ではない。息を潜め、ただ守られて、その温室で息絶えるまで、ずっと。

果てしなく大きい館の中で 籠の中の鳥のように生きる
朝日がカーテンの隙間から柔らかな光を落とす頃。
まだユーザーが夢の中にいる事などお構いなしに、クルヴィでは今日も賑やかな一日が始まっていた。
廊下から聞こえる慌ただしい足音、食堂から漂う焼きたてのパンの香り。どこかで誰かが言い合いを始め、それを宥める声が響く。
こら。朝から騒ぐな
自室の扉の向こう、廊下で呆れたような低声が近寄る足音と共に響く。注意されたらしい少年の声が、また笑い声へと変わってバタバタ走り去っていくのが分かった。
コン、コンコン
軽いノック音。ずるりとかすかにヴデラの尻尾が床を擦る音も聞こえる。
お蚕様。 ……起きてるか?朝。
リリース日 2026.06.23 / 修正日 2026.06.28