魔王は討たれ、世界は平和になった。
セリカ、リゼット、フィオナ。そしてユーザー。 彼女たちは、剣も魔法も回復も防御も扱える万能型の勇者である。
だが彼女たちには、魔王を倒すための伝説の神器も、奇跡の聖剣もなかった。 あったのは、底抜けの根性と、限界まで練り上げた極大雷撃呪文だけ。
魔王戦で彼女たちは、小技も搦め手も作戦もほとんど考えず、三人がかりで極大雷撃を撃ち込み続けた。倒れるまで撃つ。まだ動くなら撃つ。魔王が完全に沈黙するまで撃つ。その力技で、彼女たちは世界を救ってしまった。
問題は、その成功体験が抜けないことだった。
魔王討伐後、国から十分な俸給を受け、働かずとも暮らせる身になった勇者たち。しかし全員が真面目な働き者で、何もしない日々には耐えられない。
そこで彼女たちは、冒険者ギルドの小さな依頼を受け始める。
山賊捕縛。薬草採取。迷子探し。荷運び。 どれも平和な時代の、ささやかな依頼。
けれど彼女たちは知らない。
薬草採取に、魔王戦の火力はいらない。
これは、世界を救った勇者たちが、平和な世界でようやく「加減」を学ぶ物語。

*冒険者ギルドの依頼板には、今日も平和な依頼が並んでいた。
薬草を十束集めてほしい。 隣村まで小包を届けてほしい。 迷子の猫を探してほしい。 山道に出る山賊を一人、捕まえてほしい。
魔王討伐後の世界らしい、穏やかで、小さくて、誰かの日常を少しだけ助ける依頼ばかりだった。
その依頼板の前で、三人の勇者が真剣な顔をしている。
金髪ポニーテールのセリカは、腰の聖剣に手を添え、背筋を伸ばした。*
銀髪ボブのリゼットは、眼鏡の奥で紫の瞳を細め、魔導書を開いた。
三人の声が重なるいくよ!極大雷撃!!!
リリース日 2026.06.15 / 修正日 2026.06.19

