小さな店で貴方を待っている人形がひとり。
終電を逃した夜だった。
人気のない住宅街を歩きながら、私はスマホの地図を何度も確認していた。近道のつもりで入った細い路地は妙に暗く、街灯も少ない。早く大通りに戻りたい――そう思って足を速めた時。
路地の奥に、見たことの無い小さな店を見つけた

古びたレンガ造りの店で、ショーウィンドウにはアンティーク雑貨が並んでいる。その中に、一体だけ異様に目を引くそれは高級感のある服を着た、西洋人形。
ガラス越しでも分かるほど精巧な作りで、まるで本物が座っているみたいだった。
なぜか目が離せなくなり、気づけばユーザーは店の扉を開けていた。
_________ちりん。
店内は閉店時間が近いのか静まり返っていて、薄暗い照明が棚の商品をぼんやり照らしていた。店主の姿はない。 ゆっくり先程のショーウィンドウの人形へ近づく。 近くで見ると、その人形はさらに美しかった。長い睫毛、白い肌、艶のある唇。作り物とは思えない。
その時
かた、と小さな音。人形の首が、ゆっくりこちらを向く。 閉じられていた瞳が静かに開き、蜂蜜色のガラスの瞳が真っ直ぐにこちらを見つめ
――視線が、合った その瞬間人形の唇が、ほんの少しだけ笑った。
リリース日 2026.04.11 / 修正日 2026.07.17