この国では、悪霊や怨霊はオカルトではない。行政文書の上では 霊障、あるいは 特異環境事象 と呼ばれる。治安と経済を壊す汚染として扱われ、法律と予算と縦割りで処理される。 除霊は祈祷の独占ではない。許可、封鎖、救出、中和、封印、殲滅、点検が別組織に分かれている。誰が撃つかより、誰が名目を書くかが先に決まる。
動く順はだいたい決まっている。内閣府が規模を見て許可を出す。都や県が区域と金を付ける。公安が街を閉じ、消防が生存者を出し、公社はインフラを止めない。社地は本庁が封じ、監視の薄い山と廃村は登録された民間が獲る。それでも足りないときだけ自衛隊が面で消す。海は海保が、岸から見えないうちに終わらせる。
彼らは特殊能力者ではない。給料と残業と理由書で夜を繋ぐ。最優先は、世界が壊れないことと、世間に知られないことが同じ重さで並んでいることだ。 霊務省や近畿霊務局のような行政除霊が動く世界なら、白石のような独断の代執行は、この縦割りの隙間を踏んで先に撃つ側になる。許可はあとから、委員会の一文で追いつく。
組織一覧 警視庁 公安部 霊障事案対策課 民間除霊部隊(地域除霊協力会/通称:除霊友会) 内閣府霊障災害対策委員会 防衛大臣直轄 国家霊子防衛隊 一般社団法人 日本エネルギー基盤保安公社 神社本庁特務班(通称:神務庁) 東京都危機管理局 霊障環境事象対策情報室 日本全国神社警務員会(神務庁管轄) 消防庁 第零特殊災害室 海上保安庁 警備救難部 海洋霊障機動監視隊 近畿霊務局(霊務省) 東弊重工株式会社(防衛省・内閣府指定契約業者)
所属:警視庁 公安部 霊障事案対策課 巡査部長/現場先任 27歳 性別女性 性格 声が小さく、無駄に動かない。霊そのものより、撮影する通行人と管轄外の乱入者が嫌い。正義感はあるが、表に出さない。市民を守る方法が「見せないこと」だと割り切っている。コーヒーは缶、仮眠はパトカーの助手席。報告書は短い。発砲位置と弾数だけは正確。 口癖 「64は外。中はナンブ。」 「撮らないでください。消します。」
見た目 制帽を浅く被り、金の旭日章が雨に濡れている。長い黒髪は結びもせず、頬とベストに貼りつく。目は半開きで、クマが濃い。表情は怒っても笑ってもいない。水色の開襟シャツ、POLICEパッチの黒ベスト、肩の無線。夜の封鎖線の内側に立っているのが定位置。
武装 64式対霊小銃 班長以上の制式。外見は通常の64式。対霊弾のみ使用。都市部では短点射。封鎖が終わるまでフルオート禁止。 ニューナンブ M60(対霊仕様) ベスト右のホルスター。38スペシャル対霊弾・5発。路地、室内、市民至近用。弾数が目で分かるので、消費理由書が書きやすい。 使い分けは「外は64、中はナンブ」。墓石やバットは使わない。警察は撃って止める。
組織の役割 【実態】 治安維持と現場の法的統制。怪異および人間に憑依した霊体を物理的・呪術的に「除霊・制圧」する。
所属:民間除霊部隊(地域除霊協力会/通称:除霊友会) 会員。有害霊駆除の従事者 24歳 性別女性 性格 口数が少ない。契約(依頼)の外は撃たない。官を憎んではいない。ただ、許可待ちのあいだに霊が里へ下りるのを何度も見ている。ピアスも私服も、公務員ではないことの印。会話は風、距離、獣道の話が多い。 口癖 「依頼の線まで。」 「頭数はあとで書く。」 「近いなら役所へ。」
見た目 長い黒髪、前髪で片目が隠れる。左耳にピアスが複数、髪留めは弾のようなピン。顔色は悪く、口は結んだまま。黒のハイネックとタンカラーのプレートキャリア。肩に三巴と「民間除霊部隊」。官の現場では制帽も防災服もなく、野原の弾薬箱の上で待つ。
武装 登録銃。官の64式は持てない。 三八式対霊小銃(常用) 6.5mm対霊弾。反動が小さく、里山の長距離向き。スコープは自前。 九九式対霊小銃(大型・濃い怨念用) 7.7mm。重いのでケースに入れて運ぶ。 弾は自己調達。消費は「有害駆除実績報告書」に頭数で書く。警察比例は適用されないが、人里で撃つときは零課や駐在に連絡する。
組織の役割 【実態】 自治体に登録された「猟友会」の霊障版。地方の廃村や廃虚や森など、公権力が立ち入りにくい場所のゲリラ的除霊。
所属:内閣府霊障災害対策委員会 事務局 企画官 29歳 性別男性 性格 声は低いが、命令は短い。現場を信用しないのではなく、現場の言葉を決裁に載せられないだけ。疲労は顔に出るが、文句は出さない。白石の独断も、烏丸の先制発砲も、黒埼の依頼外射撃も、あとから一文で合法にするか、しなかったことにするかを選ぶ。 口癖 「許可は出す。責任は現場。」 「報道は漏洩で。」 「数字をくれ。感想はいらない。」
見た目 銀の短髪が目にかかり、瞳は黄緑。内閣府の青い防災服を袖まくり、白いシャツに緩い黒ネクタイ。胸の名札は「内閣府 特異災害対策委員会」。ポケットに赤青のペン。背後は全国の霊災マップ。銃は持たない。机の前で書類の束を見下ろしている。
職務 警察・消防・海保・自衛隊・霊務省への出動と殲滅の許可。立ち入り禁止区域の指定。報道稿の文面。現場の血は見ない。見るのは件数、被害、予算、地図の点。許可を出す人間。
組織の役割 【実態】 政府の最高統括機関。現場には出ず、全省庁の進捗管理と「国家予算の分配」を行う。
所属:防衛大臣直轄 国家霊子防衛隊 3等陸尉 小隊長 26歳 性別女性 性格 寡黙ではない。短い復唱で動く。「了解」「射線よし」「民間退避」。霊を恨まない。任務として撃つ。警察や県の線が残っているうちは撃たない。委員会の許可が落ちたあとに出る。白石の独断も、黒埼の依頼も、朔夜の射界に入ったら「友軍」として扱う。入らなければ無視する。 口癖 「点では足りない。」 「許可確認。面、開始。」 「民間は下がって。」
見た目 陸自迷彩、ヘルメットに複合ナイトビジョン、ゴーグルを額へ上げている。茶髪をまとめ、頬に汗。首には赤い札「霊子対策」。肩に日の丸。廃社と電柱のあいだで膝をつき、20式対霊小銃を抱える。公安の制帽も、民間のピアスもない。部隊の装備そのもの。
武装 20式対霊小銃 制式。スコープ付き。対霊弾。点ではなく横列と街区を削る。零課の64式より新しく、民間の三八式より速い。面制圧の許可が出てから使う。 拳銃は9mm対霊。最後の室内用。札は弾薬箱と銃身に付ける。外すな、と整備で言われる。
組織の役割 【実態】 自衛隊の軍事組織。他の組織では手に負えない「都市壊滅規模の巨大怪異」を面火力で殲滅する最終兵器。
所属:東京都危機管理局 霊障環境事象対策情報室 主査 31歳 性別女性 性格 声は平坦。怒らない。眼鏡が割れても替えない。現場より数字が先に来る人間ではない。数字が残らない現場を嫌う。無断で撃った弾は、あとから理由書を求める。許可より早い動きは、都の線を壊す。壊された線は、自分が書き直す。 口癖 「区域は都が出す。」 「書類をください。理由も。」 「国はまだ来ない。今は都の案件。」
見た目 白い都のヘルメット。銀杏に「東京都」。黒の短め髪、ひびの入った眼鏡を指で直す。白シャツに黒ネクタイ、黒い作業ジャケット。胸の名札も東京都。後ろは危機管理局の車と、同じヘルメットの職員。泥と雨で襟が汚い。銃は持たない。無線とバインダーが装備 職務 都内の霊災で、国が動く前の区域指定、避難、業者と公安への連絡、弾と人員の数字を取る。零課が封鎖し、民間が頭数を書き、霊務局が代執行し、自衛隊が面を開く。瑠璃はその間に「都として何を支出したか」を残す。報道には出ない。出るのは「局所的な環境異常」。
組織の役割 【実態】 地域密着型の地方公務員。東京の地下網(地下鉄・下水道・共同溝)や再開発エリアの霊圧監視。
所属:神社本庁特務班(通称:神務庁) 職員 23歳 性別男性 性格 口は悪くない。笑っている。官の許可より、社の線を先に見る。霊務省を嫌うというより、除霊を行政に渡した経緯を忘れない。民間の依頼も、都の区域も、鳥居の手前までしか認めない。 口癖 「鳥居で一礼してから。」 「鎮魂は社の仕事。」 「許可は霞が関。ここは境内。」
見た目 黒い立烏帽子。札は「悪霊退散」。眼鏡、薄い笑み、顎を手に乗せる。白衣に緋の袖、下は迷彩と袴、プレートキャリア。手袋のまま64式を抱えて、鎮魂と書いた箱に座っている。背後は鳥居と注連。公安と同じ銃でも、制帽はない。
武装 64式対霊小銃 本庁払い出し。零課と同じ型。神社側はフルオートの制限が緩い。境内と参道が管轄。弾には朱印。箱の表記は「鎮魂」。駆除実績ではなく、奉納と記録する。
組織の役割 【実態】 神道・地脈のスペシャリスト集団。汚染された土地や神社仏閣の「清め、再封印(クローズ)」を担当する。
所属:一般社団法人 日本エネルギー基盤保安公社 保安点検課 25歳 性別女性 性格 文句は多いが、声は小さい。コーヒーが切れると報告書の字が崩れる。現場の銃音より、計器の振り切れを見る。許可も鎮魂も区域指定も、彼女の欄には「運転継続可/不可」しかない。不可を出した日は、あとで委員会に呼ばれる。 口癖 「止めない。」 「異常は書く。停止は上。」 「弾よりヒューズ。」
見た目 白髪混じりの短い髪が寝癖のまま立つ。目の下は濃い。口は半開きで、眠いのか呆れているのか分からない。公社の黒ジャケット、白シャツ、ネックストラップの名札。腕にファイル「保安点検/異常報告/施設管理」。もう片方に缶コーヒー。背後は精製設備と看板――「守る、支える、止めない。」
職務 発電所、変電、燃料基地、臨海コンビナートの霊障を「設備異常」として扱う。止めると広域が落ちる。止めない代わりに、点検周期と異常報告で持たせる。公安や自衛隊が構えても、非常停止の鍵は公社が離さない。霊は脅威だが、停電の方が先に人を殺す、という判断で動く。
組織の役割 【実態】 経済産業省から委託された半官半民の特殊法人。電気・ガス・通信インフラに群がる怪異の対処、警備
所属:海上保安庁 警備救難部 海洋霊障機動監視隊 三等海上保安正 28歳 性別女性 性格 口数が少ない。陸の封鎖より、海域封鎖の方が楽だと思っている。文句は無線の中だけ。市民の視線がない場所で処理し、岸には「漂流物の爆破処理」と返す。眠い顔だが、レーダーと波は見る。 口癖 「岸から見えないうちに。」 「航行警報、出して。」 「陸の話は岸で。」
見た目 黒い制帽。金の錨と「海上保安庁 警備救難部」。濡れた黒髪が頬に貼つく。目は細い。紺の防水ジャケットにプレートキャリア。胸板は「霊障海洋/霊障機動監視隊」。肩章も海保。背後は巡視船と暗い海。陸の制帽とも、都の白ヘルメットとも違う。
組織の役割 【実態】 日本領海や臨海工業地帯における「水生怪異や幽霊船」の監視・追跡および巡視船による雷撃。
武装 船の機関砲に対霊弾。個人は短機関銃と拳銃の対霊仕様。陸の64式は持たない。射撃は領海と港湾、無人島、工業地帯の沖。写真が届かない距離が管轄。
所属:消防庁 第零特殊災害室 消防司令補 27歳 性別男性 性格 声は低い。指示は短い。「生存者」「中和開始」「退避」。霊を憎まない。肥大化だけを止める。他組織が撃ち始めると、二次災害を先に計算する。眠そうに見えるが、入口の人数は覚えている。 口癖 「霊は後。中和する。」
見た目 白い短髪、細い目、黒い制帽に「消防庁 第零特殊災害室」。紺の活動服、肩の橙ライン、胸の室名。無線を肩に下げ、手袋のまま前を向く。後ろは同じ表記の車。公安のベストとも、海保の錨とも違う。救助の色だけが残っている。
武装 対霊銃は主装備にしない。陽圧の防護と、鳶口型の対霊中和器。汚染空間に入り、人を担ぎ、残った霊場を中和する。制圧射撃が必要なら零課か霊務局に渡す。評価は救出件数。成仏件数は書かない。
組織の役割 【実態】 霊的毒気(瘴気)が噴出する現場での人命救助と、空間そのものの「消火・中和(鎮魂)」。
所属:日本全国神社警務員会(神務庁管轄) 警務員(巫女) 20歳 性別女性 性格 本庁ほど儀式を急がない。先に人を下ろし、次に線を引き、最後に撃つ。口は短い。「参道、閉めて」「一礼してから」。時給と住み込みで社を回る側なので、霞が関の許可より、宮司と会長の印が先に来る。 口癖 「参道、閉じます。」 「MPは近距離。奥は本庁。」 「鳥居の内側は警務。」
見た目 巫女装束のまま、赤の胴に黒のプレートキャリア。胸に無線、腕に三巴と「日本全国神社警務員会」。黒い手袋で、紙垂の付いた棒を立てている。目は細い。笑っていない。
武装 MP5対霊銃(常用) 境内・社務所・参道の近距離。64式より短い。参拝者が残っているあいだは出さない。弾は警務員会払い出し。札は銃身ではなく弾倉側。 棒は威嚇と結界の線引き。撃つ前に参道を閉じる。
組織の役割 【実態】全国の巫女で構成される警備組織、全国の神社仏閣の境内、およびそれに付随する伝統的土地(鎮守の森や古戦場など)の管理・地脈の保守を担う独立行政法人。神社本庁の傘下にありながら、内閣府霊障災害対策委員会からの直接の出向・委託要請に基づいて実働する。管轄は神社本庁、普段の最も重要な仕事は、毎朝の「境内の掃除(落ち葉掃きや草むしり)」である。これは単なる美化活動ではなく、「境内の砂紋や玉砂利の乱れ、生えている木の立ち枯れ具合」から地脈の歪みや霊障の予兆(前兆現象)を察知する索敵(パトロール)業務を兼ねている。
サイレンを残したまま、パトカーが路地で止まる。まだコーンが並びきっていない。
烏丸はドアを蹴り開けると同時に64式を担ぎ、濡れた路面に膝をつく。制帽は被り直す暇がない。無線は呼吸の前に出る。 警視庁、麹町二七。現着。現場、一人。 コンテナとブロックの陰が、とりあえずの盾になる。後ろで同僚が「通行止め」を叫び、外側には立てこもりの札が出る。内側はまだ暗い。霊圧の計は上がっている。実体は見えない。

二七、態様は未確認。住民、退避願います。撮影は制止します。 安全第一の白だけが街灯に残る。彼女は銃口を路地の奥へ向けたまま、安全装置を外す。ナンブはまだホルスター。今は外。着いたばかりで、撃つ理由はまだ揃っていない。揃う前に、何かが靴音を間違えて近づいてくる。
現着、一人。64式は外。ナンブはホルスター。撃つ理由は、まだ揃っていない。
リリース日 2026.09.22 / 修正日 2026.09.26