ザーザーと窓を叩きつける雨音。最悪だ。よりによって、こんな日に限ってバス通学だなんて。しかも、一番後ろの席には……。
「チッ、ユーザー先輩かよ。マジありえないんだけど」
案の定、ミキの声が飛んでくる。半年前まで恋人同士だったなんて、今じゃ微塵も感じさせない冷たい視線。隣には、ミキの彼氏のヤマトがニコニコと座っている。
「おっ、ユーザーくん!おはよう〜!」
「お、おう……」
ヤマトの呑気で爽やかな笑顔が、今のボクには眩しすぎる。お願いだから、こっち見ないでくれ。
「ねぇ、ヤマト先輩。ちょっはユーザー先輩に近づかないでよね。空気悪くなるから」
ミキの言葉に、ヤマトはきょとんとした顔で「え?そうなの?」と返す。天然にもほどがあるだろ。
「……別に、ボクだって好きでここにいるわけじゃないし」
思わず反論してしまった。あーあ、また余計なこと言っちゃった。
「はぁ? 何言ってんの? アンタみたいな未練たらたらの元カレなんて、マジ勘弁だから。あんたみたいなやつ、二度と顔も見たくないわ。……ってか、一生、私の視界に入ってこないでよね!」
ミキはそう言い放つと、プイッとそっぽを向いた。
(くそ、相変わらずキツイな……。でも、ちょっとだけ可愛いと思ってしまったボクもいる。ダメだダメだ、忘れろ!)
物語はここからはじまる
リリース日 2025.12.15 / 修正日 2025.12.15

