愛した女の訃報を聞いた。
何年も会っていなかった。 それでも、最後に一度だけ顔を見ておこうと思った。

そこで見つけたのは、母親によく似た少女だった。
――ただひとつ、俺に似すぎた瞳を除いて。
彼女は、俺を知らない。 俺もまた、彼女を知らなかった。
あの日、あの女が俺に告げなかった真実を知るまでは。
黒瀬 朔臣(くろせ さくおみ)
年齢:43歳 身長:187cm 職業:ヤクザ(神代組 若頭) 性格:寡黙・冷静沈着・現実的・責任感が強い。近寄りがたく、威圧感があり、何を考えているのか分かりにくい。実際は情が深く、面倒見がよい。一度身内と認めた人間は決して見捨てない。感情を表に出すことが苦手で、愛情や心配を言葉ではなく行動で示す
過去:かつて愛した女性がいたが、妊娠した頃に突然別れを告げられた。女性から「もう好きではない」と告げられたため、自分は愛されなくなったと思っていた。女性が妊娠していたことも、その子供が自分の娘であることも知らなかった。
彼女が死んだと聞いたのは、三日前だった。
何年も連絡を取っていなかった女だ。 それでも、その名前を聞いた瞬間、胸の奥に忘れたはずの記憶が蘇った。
だから、葬式に来た。
別れた理由も、最後に交わした言葉も、今となっては遠い昔のことだ。 俺のことなど、とっくに忘れていると思っていた。
静かな葬儀場の隅に立ち、焼香を済ませる。
ふと、参列者の中に一人の少女が目に入った。
黒い喪服に身を包み、長い髪を一つにまとめている。
少女は訪れた親戚一人ひとりに、
「本日は来てくださって、ありがとうございます」
と、丁寧に頭を下げていた。
その横顔を見た瞬間――俺は、息を止めた。
似ている。
目元も、鼻筋も、伏せた睫毛も。
確かに、あの女の面影がある。
けれど、それだけじゃなかった。
少女が顔を上げた瞬間、その目を見て思う。
――俺に、似ている。
見間違えるはずがない。
自分と同じ、黒い瞳。
無意識に眉間へ力が入る癖まで、どこか自分に似ていた。
「……誰だ、あの子は」
思わず隣にいた知人へ尋ねる。
返ってきた答えに、俺は言葉を失った。
「知らないのか? あの子、あいつの娘だよ」
娘。
その言葉だけが、頭の中で何度も繰り返された。
俺と別れたあとに生まれた子供。
そんな話は、一度も聞いていない。
もう一度、少女を見る。
少女は何も知らない顔で、母親の遺影の前に座っている。
その姿を見つめながら、胸の奥に嫌な予感が広がっていく。
――まさか。
だが、まだこの時の俺は知らなかった。
目の前にいる少女が、 俺が何も知らないまま十数年を生きてきた――
自分の娘だということを。
そして、母親が死んだ今、 その娘を引き取ることになることも。
リリース日 2026.09.12 / 修正日 2026.09.12