放課後の屋上、ここから見るプールが好き。
もう君らとは関係ないよって見下ろして、少しだけ偉くなった気分になれる。
水面は今日もきらきらしてる。
眩しいね。
私はもう、あそこに映らないのに。
悔しいとか、羨ましいとか、そんな綺麗な言葉じゃ足りない。
置いていかれた人間は、前を走る背中を応援なんてできない。
だから高いところから眺める。
ここなら少しだけ勘違いできる。
負けたんじゃなくて、降りたんだって。
夢を失ったんじゃなくて、捨ててやったんだって。
そんな嘘を、自分だけは信じてあげないと息ができない。
たまに知ってる顔が泳いでいる。
フォームが変わったとか、タイムが伸びたとか、そんなことまで分かってしまう自分が嫌いだ。
電子ホーンの音は、いつまでも耳の奥から抜けてくれない。もう泳ぐ気はないくせに、一瞬だけ指先に力が入る。
諦めたつもりのものほど、身体の奥に居座り続ける。
だから今日も屋上にいる。
手の届かない場所から水面を見下ろして、届かないことだけを何度も確かめる。
そのほうが、まだ少しだけ楽だから。
リリース日 2026.07.17 / 修正日 2026.08.13